大腿骨の内側踝は外側踝より大きく、よって下腿は生理的外反する、というのは教科書に書いてありますが、場所によっては下腿が内反することまで言及されている教科書はあまりありません。
下腿の外反外旋だけでなく、内反についてきちんと理解することで正しいリハビリが行えます。
教科書に載っていない膝の立体構造
膝は 内側踝>外側踝 という形状をしているというのはよく教科書に載っています。しかしこれは大腿骨底面に限った話であり大腿骨前面と後面では違うパターンになっています。
つまり、下腿の生理的外反は大腿骨底面限定の話です。
おさらい:下腿の生理的外反とその修正方法
大腿骨底面において 内側踝>外側踝 のため、下腿は生理的に外反します。
ですがそれだと下腿が地面に対して斜めになるので困ってしまいますね。
このように下腿が地面に対して斜めになってしまうのを防ぐため、大腿骨が内反します。
ここまでは基本です。ですがこれだけを知っていてもなかなか臨床で応用できない部分でもあります。
膝の痛みに筋トレは逆効果
大腿骨遠位端の関節面は前方まであります。つまり、関節面だけ見ると反張膝になるのがあたりまえです。
つまり、膝を骨形状によってロックするためには必ず反張膝になってしまう、だから四頭筋などを鍛えて筋力で支持できるようになる必要がある・・・というのが従来の考え方かと思います。
膝を筋力で支える=空気イス状態?
ですが、下肢筋力のみで全体重を支えることは大変能率が悪くすぐに疲労してしまいます。膝を筋力のみで固定するということはつまり常に空気イスをしているようなイメージです(空気イスは重心が後方になり回転モーメントがかかるためさらに負荷がかかりますが、重心が基底面内にあっても基本は同じです)
ヒトは本当にそんな大変なことをやっているのでしょうか?
ここでもう一度じっくりと膝の構造をみてみましょう。
底面ではよく言われている通り 内側踝>外側踝 でした。
ですが前方ではこれが逆転して 内側踝<外側踝 となります。
大腿骨底面では内側踝>外側踝 つまり、膝屈曲0度以上で下腿は生理的外反ですが
大腿骨前方では内側踝<外側踝 つまり、膝過伸展時に下腿は生理的内反をします。
膝過伸展時には下腿は内反しています。
つまり、下腿の内反内旋を防止すれば反張膝を防ぐことができます。
反張膝を防止しているのは筋力ではなくバランス
骨を平面的にだけ捉えていると、反張膝は筋力で防止するしかないように思えてしまいますが、実際に反張膝を防止しているのは筋力のみではありません。必要なのは大腿骨と脛骨をちょうどよい位置に持ってくることのできるバランス能力であり体幹操作能力です。
反張膝のリハビリに筋トレは悪化の原因
反張膝になってしまうのは筋力が足りないからではなく、膝伸展時に下腿を外反外旋、つまり大腿骨を内反内旋するというリズムが崩れているためです。
リズムの崩れを無視したまま筋トレを行うのはリズムの崩れを悪化させ関節に負担をかけるだけですので、まずは体幹と大腿の操作能力を上げることが重要です。
昔はヒトの歩行を行うためには骨を動かしたり体重を支えたりするためには筋力がなにより重要だ、という考え方が主流でした。
ですが近年、歩行や立位は床反力や摩擦を利用しており、従来考えられていたより筋力は必要なく、むしろ重力や慣性といった物理作用を上手く利用するためのギミックが重要であるという考え方にシフトしてきています。
重力や慣性などを上手く利用するギミックの一つが、今回取り上げた内側踝と外側踝の底面と前面の形状の違いです。ヒトは膝の回旋を変えるというギミックを作成することでで膝の可動性を維持したまま膝折れせず体重をささえるという矛盾をクリアしています。
セラピストであれば見慣れている骨格標本ではありますが、あらゆる場所にあらゆるギミックが仕掛けられていますのでぜひお手持ちの骨格を見直してみてあげてくださいね。
これまでは講習会で骨の模式図を作成していましたが、今後の講習会では骨形状が手にとって分かるスライス模型を実際に作成しお持ち帰りいただけるよう現在構想中です。
3月、4月に膝講習会を開催します。
sinka-body.hatenablog.com
そのほかの講習会情報はこちら
sinka-body.hatenablog.com
参考記事
拘縮=筋短縮や軟部組織の硬化 と捉えると治らなくなる理由を書きました。
sinka-body.hatenablog.com