大脳の錯覚を考えるシリーズの3日目です。
今回は支持基底面の大きさとバランスについてです。
支持基底面は大きいほど安定すると思ってしまっていませんか?
これはマネキンのように動かない物体であれば正解ですが、ヒトのように柔軟性があり常に動いている物体には適応しません。支持基底面が大きな物体は少しでも動くと基底面がなくなってしまうからです。人間の場合、重心動揺が常に起こっているため基底『面』がいくら広くても意味がありません。
足底の接地面積が大きいほど安定するというのも誤解の一つです。
動く物体は支持基底面が限りなくゼロ、つまり『面』ではなく『点』にならざるをえません。ですが、尖足のように足底を一点のみで支えると不安定になり転倒してしまいます。よく問題になる尖足は『接地面が狭くなること』ではなく『接地面が広くなり運動に対応できないこと』が問題と言えます。
転倒の字が間違っていますが気にしないでください…
このジレンマを解消するために、ヒトの足底は「面ではなく複数の移動する点で支える」というシステムを採用しています。
つまり、尖足の治療は接地面を増やすのではなく、接地点を増やす、つまり足部の関節群の柔軟性と随意性を高めることです。(足関節の柔軟性と言っても、むりにモビライゼーションして関節をゆるくするのは禁忌です。あくまで全身、とくに体幹の随意性を高めた結果として足底の随意性も高まるという流れになります)
ハンズオン時の手の使い方
話が脱線してしまいましたが、尖足と中枢疾患リハビリについてはまた次回にゆずることにして、今回は「ハンズオン時の手の使い方」についてお話します。
患者様の体を触るとき、どのようなことを気を付けていますか?
運動時には面ではなく複数の点で支えるという原則を踏まえると、患者様の体を触るときにも面ではなく点で触れる必要があるということが分かると思います。べたっと手の平全体を巻きつけるように触れると接地面が広くなります。この状態で無理に動かそうとすると筋力で力任せに動かすことになります。
ですが、指先や拇指球などを利用し点で触ることを意識すると軽く動かすことができます。
先入観を超える
接地面が広いほど安定し、力を伝えやすいという思い込みは非常に強固です。
患者様に点で触れる、点で動かすというのははじめは違和感が強いと思います。ですが「べたっと触って力任せに動かすのがあたりまえ」という刷り込まれた先入観を払拭すると、患者様にとって最も安心感があり効果のあるリハビリが行えるようになります。
とくに中枢疾患の急性期では全身が完全に弛緩しているため「べたっと触って力任せに動かす」というROMを行ってしまうと予後に影響しますので十分注意してください。
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