進化から理学療法を考える 姿勢発達研究会のブログ

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脊柱が純粋な側屈をしない理由:脊柱の3次元構造からカップリングモーションを解析する その1

体幹の純粋な側屈は存在せず、側屈には必ず回旋が伴うという「カップリングモーション」という現象が知られています。今回3DCGで脊柱のモデルを作って解析してみたところ、非常にシンプルに体幹の可動性が説明できました。

腰椎のみ反対側回旋の理由やS字カーブの理由などもこれで説明できますし、上下肢の運動は全て体幹の可動性から発生するということもわかります。

 

脊柱が純粋な側屈をしない理由

 脊柱の中には脊髄が通っています。脊髄が傷つくと脊髄損傷になります。

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そして、脊椎が純粋な側屈は、こんな動き↓になります。

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脊髄がぽきりと折れてしまうから、脊柱は純粋な側屈をしません。

 

そして、体幹のリハビリを行う際に純粋な側屈を行う危険性もこれで分かります。

 

このように、臨床や研究で観察される事象は全て物理的に説明することができます。というより、物理的に合理的であるからこそ「正しい動き」として一般に観察することができるという順番が正しいのでしょう。

余談ですが、肩甲骨面挙上や歩行時の骨盤の回旋なども上記のような骨の形状から導き出すことが可能です。そのあたりは講習会では詳しく行いますが、いずれブログにもまとめていきたいと思います。

運動学や理学療法学は新しい学問のため、これまではひたすらに臨床データを集め分析する基礎研究が多くなされてきました。ですが、ある程度のデータの蓄積ができた今後は、積み上げられたデータを物理や人体デザインに基づいて意味づけしていく必要があると私は考えています。

 

 

 

 

脊柱の形状

脊椎は頚部・胸部・腰部で形が違いますが、まずは一番オーソドックスなモデルを作りました。

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二つ重ねるとこんな風↓に上部椎骨の横突起の凸部が下部椎骨の横突起の凹部にはまるようになっています。うまくできていますね。(このような椎骨のパズルのような形状は上下の体節がくっつくことで起こります。そのあたりの進化も興味深いですがそれはまた今度。)

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ですが、このように椎骨同士ががっちりと噛み合っていると、ほとんど可動性がありません。実際の骨はさらに複雑に噛み合っているので特に腰椎などは1度前後しか動かないという研究があります。

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 このように、通常の状態ではほとんど可動性のない形状をしている脊柱を無理やり動かすことでヘルニアや棘突起の癒着などの障害が起こります。

 

脊柱にも自由度は無い

 骨の形状と構成物質の強度から考えると、関節に『可動域』と『脱臼』はあっても『自由度』は存在せず、それぞれの関節にそれぞれ『唯一正解の動き』が存在します。これは脊柱も例外ではありません。

参考過去記事

 

sinka-body.hatenablog.com

 

sinka-body.hatenablog.com

 

 

sinka-body.hatenablog.com

 

前後左右自由自在に動くはずの脊柱に『自由度』が存在しないというのはかなり信じがたいですが、人生80年間ずっと同じ関節を使い続ける以上、むやみに自由度を上げて関節を破壊しないというのは非常に重要な生存戦略です。

とはいえ、脊柱には細かく分けると9種類の関節が存在してそれぞれに独自の動きをします。つまり、一つの椎骨は9種類の動きをすることになります。これが体幹のみかけの自由度の高さの理由の一つです。

 

脊柱の運動を解析する

ざっくり分けて、脊椎の関節は二つに分類することができます。

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↑椎体と椎間板から構成される腹側の関節面と、横突起と棘突起から構成される背側の関節面です。

そして、前述したように脊柱は脊髄を守るために存在します*1。つまり、脊髄部分を軸にして動くようにデザインされています。

脊椎の関節といえば椎骨が目立ちますが、もし椎骨を中心に回旋するとこんな風↓に脊椎が捻じ曲がります。

 

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 脊髄を軸にして回旋した場合は脊髄は動きません。ほんの1cm前後のことですが、正しい動きをすることが脊髄を保護しより安全で力強い運動を生み出します。そのため、体幹のハンドリングは非常に難しく、これまでセンスや勘といったものに頼ったものが主流でした。ですが骨の形状をきちんと考えることでEBMに基づいたハンドリングを行うことができます。

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この動画↑のように脊髄を中心に回旋していれば脊髄はねじれたり引き伸ばされたりせずに動くことができますが、これでは回旋しかできません。

体幹の回旋は上下肢の屈伸に非常に重要で、ヒトはこの回旋の運動を利用して下肢を屈伸させ歩行しています。これは車のエンジンのような歯車構造を考えると説明できますので今後書いていきたいと思います。

 

 

 ですが、体幹は見かけ上側屈や屈伸をします。前述したように、純粋な側屈や屈伸をすると脊髄損傷になってしまうはずです。

これはどういう現象なのでしょうか。

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これは内骨格生物が関節をどのように進化させてきたか?を考えると理解することができます。やっとカップリングモーションの登場です。長くなりましたので次回の記事で説明します。

 

今回のまとめ

  • 純粋な側屈をすると脊髄損傷になる。
  • 丸暗記ではなく、物理的な理由を知ることで正しいリハビリができる。

 

よほどの達人でない限り、体幹が完全に動くという人はほとんどいません。一見問題ない人でもなにかしら体幹の拘縮を持っています。それはPTや研究者も例外ではありません。そのため、体幹がきちんと動くとはどういうことか?上下肢の運動に体幹がどのように関わっているか?を理解しているPTは非常に少ないように感じます。

体幹を利用して物理的に合理的な運動を行うと、いつもの10分の1、100分の1の力で上下肢を動かすことができます。

このあたりの説明を非常に難しいですが、実際に体を触って実感してもらえれば一発で分かりますので、興味のある方はぜひ講習に来てもらいたいと思います。

 

この記事の続きはこちら。

 

sinka-body.hatenablog.com

 

 

 

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 参考過去記事

sinka-body.hatenablog.com

 

*1:発生学的に考えると、脊柱は椎体を動かすために存在して、脊髄はオマケなのですが、とりあえず今回はシンプルに考えました。