拘縮というと、固まってしまった軟部組織をゆっくり伸張して時間をかけないと改善しないと思う方もいるかもしれません。ですが、正しいROMを行えば拘縮はすぐに治ります。
前回、股関節は本当は70度までしか屈曲しないという研究を紹介しました。
今回はこの話をさらに発展させ、具体的な拘縮の治療手技をお話します。
動画解説はこちら。(約25分)
股関節を初めとする全身の関節は全て、思った以上に動きません。一般的なROMの運動は体幹などの代償を行う複合運動です。拘縮へのアプローチを行うときには「その関節が本来どのように動くか?」をしっかり理解すると、短時間で無理なく改善します。
では、実際の「正しい動き」とはどんな動きかを考えていきます。
股関節の通常の屈伸運動は骨同士がぶつかる非常に危険な動きなので決して行ってはいけない、ということを前回の記事で書きました。
では骨同士がぶつかったり靭帯が引き伸ばされたりしない「正しい動き」とはどんなものか考えていきます。
まず条件として、股関節はこのような↓形状をしています。
この形状を再現した3DCGモデルを作成し、どのように動くかシュミレーションを行いました。
条件は↓以下の通り。脱臼せず、骨がぶつからず、靭帯が引き伸ばされない動きは可能か?を試行したところ、
↓試行の結果このような、骨頭の部分を球に見立て、その中心から骨幹に向かう線を軸に回旋運動を行うときのみ、条件を満たした「正しい股関節の動き」を行えるという結論になりました
この動きを行ったのが以下の動画です。
向かって右側にある薄い色の円錐は大腿骨の軌跡を表しています。
↓こちらは 右クリック&ドラッグで移動、スクロールで拡大、左クリック&ドラックで動きを操作して自由な角度から見ることが出来ます。
↑上の3D動画は処理が追いつかず途中から円錐から外れたように見えてしまっていますが、実際は円錐の上を滑るように大腿骨が動きます。
このように、骨の形状からシュミレーションを行うと、股関節は円錐上を滑るような動きのみを行うということがわかります。
これは先行研究の「股関節の純粋な屈曲は70度、外転外旋を伴う屈曲は110度」という結果とも一致します。
つまり、ROMを行うときには
拘縮≠関節が固まっている
拘縮=関節を変な方向に動かそうとしている
という考え方が非常に重要です。
旧来の「屈曲・外転・外旋etc」というまっすぐな方向に無理に動かそうとすると、骨や靭帯に負担がかかり改善までに非常に時間がかかってしまいますが、3D上の円錐運動をしっかり理解し、正しい運動方向に動かすことで拘縮が改善します。
こちらは外国の方が正座を練習方法を解説した動画です。(補助線は筆者)
はじめ(0,20)膝屈曲確度は100度程度で軽い屈曲拘縮の状態です。
膝をきちんと曲げるためには力任せに可動域訓練をするのではなく
下腿の外旋と大腿の内旋運動を行う、という解説をしています。
とくに膝は負担のかかりやすい関節なので、旧来式ROMは厳禁!です。
膝の治し方の動画はこちら。
次回は、股関節の円錐状の運動をどのように代償して「屈曲・伸展etc」という自由な運動にしているのか?について書いていきたいと思います。
参考過去記事