今回は運動学や解剖学が苦手、教科書を読んでもイメージができないというセラピストのための懇切丁寧な解説です。運動学も解剖学も、文字ばかりの教科書だと難解に感じますが、動画と3Dで見れば直感的に理解できます。
もくじ
足首のROMは危険!
健康な足首はなめらかに自由な方向にぐるぐるまわりますが、足首を構成する一つ一つの関節に注目すると実は自由度も可動域もそれほど大きくありません。
小さく動く複数の関節が同時に動くことで、足首全体としては大きな可動性を持っています。
これを理解せずに「足首は可動性が高い」と思ってしまい無理なROMを行うと足首を痛めます。足部は地面と設地する唯一の部分のため、怪我や変形が起こると代償ができずADLに大きな制限を与えてしまいます。そのようなことにならないように、足部の各関節についてきちんと勉強する必要があります。
今回は、重要&必須だが難解な足部を構成する骨と関節についての基本を3Dと動画で直感的に分かるように解説していきます。
足部の骨
まずは足を構成する骨についてのおさらいです。
このあたりは理学療法や作業療法士の国家試験にも出る部分なので暗記している人も多いとは思いますが、臨床で応用できるレベルまで理解できている人は案外少ない部分です。
足部の骨格をシンプルな模式図にするとこのようになっています。
左足を外側から見た図です。
足首の部分は下腿を構成する脛骨、腓骨、足根部を構成する距骨、踵骨、舟状骨、立方骨、楔状骨、と合計9個の骨があり、それぞれが関節を構成しそれぞれに独自の運動軸を持ちます。とても複雑で立体的な構造をしています。
距骨は内果と外果の真下にあるため、外からは触りにくく意識しにくい位置になっています。
距骨が作る関節
まずは足首の可動を作るための距骨に注目したいと思います。
距骨の上が距腿関節
距骨の下が距骨下関節
と呼ばれます。
立体的にみるとこのような位置関係です。
クリックすると動画がはじまります
距腿関節の運動
距骨の上側と下腿をつなぐ距腿関節は足首の底背屈を行います。しかし、運動軸が少し複雑なため、単純な底背屈ではなく複合運動となります。これを理解せずに足首のROMを行ってしまうと関節を痛めるので要注意です。
距腿関節の運動軸
距腿関節は運動軸は前額断面から約20°後方へ傾き、横断面から約15°下方に傾いていると言われます。
このような教科書的な図だけだと分かりにくいので、もう少し分かりやすく図式化してみます。
まずは距腿関節と全身の位置関係です。
距腿関節の運動軸は 内側上前方→外側下後方 という位置になっています。
CG化して様々な方向からみてみました。
↓ クリックすると動きます
このように運動軸が少し斜めになっている距腿関節がどのように動くかをシュミレーションしてみました。
まずは外側から見た運動です。
クリックすると動きます
外側から見ると普通の底屈・背屈とほとんど変わりなく見えます。
しかし、正面からみると違いがよく分かります。
クリックすると動きます
距腿関節は
- 背屈時に外反
- 底屈時に軽度内反
です。足首を曲げると足は外側を向きます。足の裏が内側に向くとも言えます。
他動で距腿関節背屈のROMを行う場合は、まっすぐ曲げるのではなく、母指側を少し大きく曲げるイメージです。
自動で背屈を行ってもらう場合は「つま先を外側に向けながら足首を曲げてください」「足の裏を内側に向けながら足首を曲げてください」などと言うと伝わりやすくなります。
これを理解すると、足部の底屈制限や背屈制限、尖足などの異常歩行につながる可動域制限の治療に役立ちます。運動軸をイメージするのが少し難しいですが、きちんと理解するとこれまでどんなにがんばっても動かなかった足首がするりと動き、歩行が変わるのでがんばってみてください。
骨のイメージだけでは難解になるが…
骨格をしっかり捉え、3Dで運動方向をイメージすることがROMを行う最低条件です。これができなければセラピスト失格!というくらい重要です。
ですが、距腿関節は内果外果の真下にあるため触りにくく、骨格だけをイメージして正しい運動方向を探すのは慣れない人には難しいかもしれません。そういう場合は筋から捉えると上手くいきます。
距腿関節の3DROMで足関節拘縮を治す方法は近日公開予定です。
関連記事