進化から理学療法を考える 姿勢発達研究会のブログ

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【ナイトセミナー】CVAの拘縮、痙縮の原因別評価と適切な治療について

中枢性疾患の現場では


「この患者さんには拘縮がある」

「関節が硬くなってしまうから動かさなくては」

 

という言葉がよく聞かれます。

ですがはたしてそれは「拘縮」なのでしょうか?

たとえば、中枢性疾患では、臥位では問題ないが座位や立位をとると緊張が上がるという運動時過緊張という現象が発生します。この場合、臥位であれば関節を動かせるのであれば軟部組織には問題ないはずです。こういった方にROMエクササイズやマッサージやモビライゼーションを行うのは的外れな治療になってしまいます。

 

 

中枢性の疾患では、末梢の筋や関節を動かすだけでは根本の解決にはなりません。

 

拘縮=筋や靭帯などが変性すること

痙性=中枢神経系からの異常な指令により筋が過緊張になること

 

の二つをきちんと区別し、原因に沿ったアプローチを行う必要があります。

 

【「拘縮」への治療が逆効果になることも…】

過剰なマッサージや過剰な運動の後にかえって痙性が強まってしまった経験はないでしょうか。

長期間の固定などが原因で単純に委縮変性してしまった「拘縮」であれば、もみほぐしたり運動したりすることで改善します。ですが、「痙性」によって脳から過収縮の指令が出ている筋繊維を無理やり引き伸ばしてしまうと筋繊維の損傷や、過収縮が強まってしまう現象がおきます。

 

【そもそもなぜ「痙性」が起こるのか】

損傷した脳が『何らかの理由』で筋肉に「収縮しなさい!」という指令を過剰に送ってしまっているのが「痙性」です。

 

つまり『何らかの理由』を取り除くことで、痙性を治療することが可能です。

 

ではなぜ「痙性」という現象が起こってしまうのでしょうか。

 

実は「痙性」は日常生活の中で誰もが経験しています。

乗っていた電車が急ブレーキをかけたとき、足の小指をぶつけた時など、侵害刺激を感じた時に無意識に体が動いていないでしょうか。脳は自分を守るために常に指令を送っています。患者さんは脳の損傷により、外部からの情報をうまく処理できなくなっています。いわば濃い霧の中で周りに何があるのか分からないような状態です。もしそのような状態になったら足がすくんで動けず、近くの手すりにしがみつくのはごく自然な反応です。

つまり、痙性の治療では「濃い霧の中にいる状態」を解除するための適切な刺激を入れる必要があります。

 

今回のナイトセミナーでは、日常で経験するごく軽度の痙性を自分の体で体験することで痙性への理解を深め、目に見えにくい中枢系のアプローチを考えてゆきます。

 

【内容(予定)】

自分の体の筋緊張を上げてみる

不随意な筋緊張を体験してみる

筋緊張が上がった状態で「拘縮」治療と「痙性」治療を実際に受けてみる

筋緊張と随意的な収縮との違いを感じる

筋緊張を正常化するためのアプローチを実際に自分の体で体験してみる

この他、時間があれば視覚や聴覚による空間把握や感覚と筋出力の解離などを行う予定です。

 

 

 

今回は体験がメインの短期間のナイトセミナーですが、時間があれば治療や理論についてもお話する予定です。

 

【痙性を理解するための二つの視点】

痙性はごくあたりまえの防衛反応が過剰に起きてしまっているものなので、患者さんの脳がどのように外部環境を捉えているのか?を評価することで治療の方向性が見えてきます。

 

1・ローカル重心

尖足やマンウェルニッケや共同運動パターンやプッシャーやぶん回し歩行など、中枢系疾患の運動障害は全てこの『グローバル・ローカル重心コントロール』で説明することができます。

上肢や下肢などの重量をうまくコントロールできないと、体幹に上下肢を引き付ける共同運動パターンが発生します。ここで重要なのはどこの重心をコントロールできていないかではなく、どうしてコントロールできないか、です。上肢の屈曲が強まってしまうから上肢の伸長を促すという「拘縮(ローカル)」へのアプローチではなく、屈曲が強まる原因である体幹へのアプローチを行います。

 

2・ボーンリズム

内骨格生物の筋は全て螺旋状に付着しています。これは筋が伸長することによる固定力と運動の伝播の作用のためです。内骨格生物では個々の関節がもろい反面、張力による固定と伝播によって全身に運動を分散させるという戦略をとっています。たとえば膝を屈曲する際に膝関節だけでなく指先や脊柱など全ての関節が張力によって順序良く動くことで膝の負担を軽減しています。

過緊張や低緊張により筋の位置が変わってしまうことでこの自然なリズムが失われると個々の関節の可動性は大幅に下がってしまいます。中枢性疾患の方の多くが股関節屈曲パターンなど決まった動きしかできなくなるのはこれが原因です。

 

 

 

 日時

1回目 1月29日(水)18時から21時

一回目と二回目は同じ内容です。どちらかご都合の良い日にお申込みください。

 遅れる場合はご連絡ください

定員20名 最少開催人数5名

場所 新宿、杉並付近(予定)

参加費 3500円

参加資格 PT・OT・ST 学生 看護師 医師 介護士 鍼灸師 按摩マッサージ師 指圧師 整体師 ボディワーカー そのほか医療従事者など

 

お支払い方法・お申し込みから2週間以内にカードまたは銀行振り込みをお願いします。

キャンセルポリシー・少人数制のため、お申し込み後のキャンセルは受け付けておりません。ご了承ください。

 

 

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【東京セミナー情報】進化とデザインから考える痙性の運動戦略と治療『体感』ナイトセミナー

最近は連続講座のほうに注力してきましたが、今回は3Dリハビリ技法がはじめての方向けの講座です。

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痙性は合理的な『運動戦略』

異常な筋緊張が起こり随意運動が阻害される痙性は脳損傷によるエラーによって発生しています。そのため治療法としては固まった筋をほぐすことで正常な筋緊張に戻す手技が主流です。

ですが痙性は単純に異常な反応というわけではなく、中枢系麻痺という異常事態に最適化した現象でもあります。痙性が起こるのは必ず根本の原因があり、原因を考えずに痙性だけを治療しても良い結果が出せません。

中枢神経麻痺は難しくない

末梢神経損傷では動かせないというある種シンプルな麻痺が発生するのに比べ、共同運動パターンなど、動かせるのに意図したように動かないという一見不可解な現象が起こります。また中枢神経系のシステムはまだ未解明な部分が大半であり、現在解明されている部分ですら複雑怪奇な上、現代医療では脳を直接修復する方法はありません。

中枢神経系の損傷においては、現代の医療水準ではブラックボックスと化している不可解な脳という器官の異常に対し、筋骨格系を介して間接的にアプローチするため難解なものとなっています。中枢系は難しいと思い敬遠しているセラピストや、よくわからず無理にROMや筋トレを行ってしまう新人セラピストも多いと思います。

 

中枢神経系は複雑怪奇であり大半が未解明です。ですが『筋骨格系とのやりとり』に限定した場合、実は中枢系は非常にシンプルな構造です。

 

脳は自分の肘屈曲角度が分からない

脳が把握しているのは関節角度ではありません。

自分が今どのような姿勢をしているのか、脳には直接把握するための装置はありません。筋紡錘、腱紡錘の伸長情報によって「二頭筋がこれだけ伸長しているのであればきっと肘も伸展しているだろう」というように推論しています。(詳しい解説は講習会で行いますが、関節位置覚は脳にとって非常に優先度の低い情報でありほとんど皆無と考えて構いません。)

 

運動器系に限って考えれば脳が受け取るのは、筋と腱がどれだけ伸ばされたか、という情報のみです。この乏しい情報から自分の姿勢を推理し目的の運動を発生させます。

 

複雑怪奇に思える中枢系麻痺の原因は非常にシンプルで、筋が異常に伸長されたり脳が筋の伸長情報を過剰に受容する場合に中枢系の麻痺が発生します。

 

ヒト進化から紐解く筋の作用

筋は主動作筋の求心性収縮と拮抗筋の遠心性収縮により作用していると思ってしまっていませんか?

ヒトは進化の過程で「省力化・複合化」を選択しました。大型哺乳類最下位クラスの運動能力しか持たない人ですが、皮膚の無毛化や肝機能の強化といった進化を遂げ、持久力では地上最強を誇ります。瞬発力では家畜のブタにすら劣りますが、野生のシカを衰弱死させさらに重い獲物を抱えて帰途につけるだけの驚異的な持久力がヒトの進化を支えてきました。

このような特殊な進化をしたヒトの筋は求心性収縮というコストの高い運動を行わず、自重と重力というコストゼロの力を運動に変換させる仕組みを発達させました。足底のアーチや背筋群のマジックハンド、下肢の螺旋ベクトルなど、ヒト特有の運動機構を理解せずに運動麻痺を治療することは不可能です。

 

ヒトは動物実験が主な現在の生理学ではとらえきれない筋作用を活用しています。それを解明するため姿勢発達研究会では3DCADや物理演算エンジンを用いて人体実験によらない膨大な研究を可能にし、さまざまなヒトの運動機構を発見、治療に活用しています。

 

従来の運動学や生理学とは大きくかけはなれた3D運動学が理解できるのかという不安を解消するため、今回は主に筋作用と痙性に注目し、理論の前に自分の体を動かして『体感』できる場を用意しました。

 

日時 2019年5月15日(水)18時から21時(遅れる場合はご連絡ください)

場所 池袋周辺

   人数によって場所を変更する場合があります

参加費 3500円

最低開催人数 3人

開催人数に満たない場合は延期します。ご了承ください

 

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PTの独立開業は違法?現役弁護士に聞くリハビリ職の起業・開業

以前は理学療法士といえば病院や施設にいるものでしたが、最近は随分と活躍の場が広くなってきました。

PTやOTが独立開業するためのセミナーなども増えてきましたが、そこで推奨されている方法は本当に安全で合法でしょうか?

 

理学療法士名称独占資格であり、開業権はありません。

でも理学療法の手技自体はオープンソースであり使用制限はありません。

 

この二つがまぎらわしく、いろいろな誤解が起こってしまっています。

理学療法士理学療法をつかって開業するのは少し複雑な法律問題をクリアする必要があります。逆に、法律問題をクリアすれば開業は合法です。

 

また、開業した場合の医療事故はどのような扱いになるのでしょうか?

治療院にいらした患者様が急変した、転倒させてしまったなどの事故が起こってしまった場合、長い取り調べや裁判、数千万の損害賠償、刑事事件の前科など全て一人で背負わなくてはいけないのでしょうか?

ネットで事故の事例は調べられても、実際のところどのようになってしまうか実感を持つのはなかなか難しいです。また我々は法律に関して全くの素人なので何を言っても憶測の域を出ません。

 

 

そこで、医療系を専門とする弁護士の先生をお招きしてリハビリ職の独立開業に関する法律のセミナーを開催していただくことにしました。

普段話を聞く機会の無い弁護士さんに直接質問できる貴重な機会です。

 

日時

12月13日(木)18時から21時

場所

 

渋谷駅徒歩5分

東京都渋谷区道玄坂2-26-3トップルーム道玄坂501号室

Google マップ

 

受講料

5000円

(連続講座参加者は無料)

 

 

 

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講習会のお知らせ

 

 

 

 

二回目開催決定・中枢系を理解するためのボディワークセミナーin埼玉

2018年10月に二回目を開催します。

 

 

今回は少し変わった形式の中枢系セミナーを予定しています。

 

 

 

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中枢系は難しい?

CVAやパーキンをはじめとする中枢系の疾患は末梢系や怪我などと比べ多様な障害像があり理解が難しいため苦手意識を持つセラピストが多いようです。

実際、「もし骨折したら骨折部位が痛いだろう」「もし尺骨神経が麻痺したら小指が動かないだろう」などと想像することはできますが、共同運動パターンがみられる中枢系麻痺に関してはどうしてそうなるのかが感覚的に理解できないかもしれません。

 

中枢系に安易なROMexは禁忌です。

卒業したての新人セラピストであれば、たとえばマンウェルニッケ肢位をみて「肘の拘縮だ」と考えて肘のROMを行ってしまうかもしれません。

ですが中枢系の麻痺は単純な拘縮ではないのでどんなに愛護的に肘を伸ばそうとしても周囲の関節や筋を痛め二次障害が起こってしまいます。「なぜ、肘が伸びないのか?」をきちんと理解するのが安全で効果的な中枢リハビリの第一歩です。

動作分析が理解の根幹

患者様の体の使い方を観察分析し、どこに負担がかかり、どこをかばって動いていらっしゃるのか、そしてどのように動けばより合理的かを考えるのが動作分析です。正確な動作分析ができなければ分析も考察も行えず、あてずっぽうの治療しかできません。

逆に、動作分析をしっかり行い、自分の身体で運動を再現できれば根拠のある効果的な治療が行えるようになります。

動作分析は大変重要ですが、重要なあまり苦手意識を持ってしまうセラピストもいるようです。

中枢麻痺は『感覚的な理解』が必要

冒頭で「健康な状態では中枢麻痺の状態を想像するのは難しい」と書きました。関節や筋には問題ないはずなのに、なぜ肘が伸びないのか、なぜ指が分離できないのか、神経学的な理論を学ぶことはできてもそれがどういう状態かを感覚的に想像することはとても難しいのではないでしょうか。

中枢麻痺は見かけの姿勢だけを真似しても理解できません。みかけだけマンウェルニッケの肢位や外旋歩行をまねしても、それは肘や股関節の可動域制限がある人の真似であって中枢麻痺の動作分析にはならず、結果として正しい治療ができなくなってしまいます。

中枢麻痺の根幹は体幹と感覚

中枢麻痺の動作分析を行うためには体幹を理解する必要があります。

脊柱、体幹の運動を分析することで中枢麻痺の共同運動パターンの発生機序を理解することができ、きちんとした治療を行うことができるようになります。

感じる、体感の大切さ

中枢系に苦手意識を感じてしまうのは、感覚的、直感的な理解を経ずにいきなり理論を詰め込まれてしまうからではないでしょうか。理論だけを詰め込むのは、全く知らない町の地名を覚えるようなものです。

「共同運動パターンで動くってどういう感じ?」

「異常感覚ってどういう感覚?」

など、素朴で直感的な理解を積み重ねることで、難しい理論も自然に理解することができます。また、すでに理論を十分理解している理学療法士も感覚的な理解を体験することでこれまでの知識が統合され、さらに高度なリハビリが可能になります。

 

中枢系を理解するためのボディワークセミナーin埼玉

日時 10月20日(土)10時から16時 

 

参加費 12000円

 

場所 岩槻駅東口コミュニティセンター

岩槻駅東口コミュニティセンター/公益財団法人さいたま市文化振興事業団

 

参加資格 PT・OT・ST 学生 看護師 医師 介護士 鍼灸師 按摩マッサージ師 指圧師 整体師 ボディワーカー そのほか医療従事者など

 

お支払い方法・お申し込みから2週間以内にカードまたは銀行振り込みをお願いします。

キャンセルポリシー・少人数制のため、お申し込み後のキャンセルは受け付けておりません。ご了承ください。

定員 5名程度

 

お申し込みはこちら

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拘縮を治すためのROMの考え方

学校で習う関節可動域、いわゆるROMはリハビリの評価や治療に使ってはいけない評価だというのは、ある程度経験を積んだ理学療法士であれば誰でもご存じだと思います。

 

肩関節、股関節、など、『関節』という言葉を使っているので紛らわしいのですが、ROMでは『関節』については一切考慮していません。

 

「股関節屈曲制限がある」

と言われたら、ついつい

「ではROMエクササイズを行い股関節の可動域を広げればいい」

と思ってしまいがちです。

 

ですがこれは大きな誤解です。ROMやMMT治療に使うべきではない評価です。

 

 

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ROMの定義を再確認

以下は股関節屈曲についての定義です。

股関節の屈曲は、下肢全体が股関節を通る前額面の前方へくるように大腿前面を体幹に近づける動きのことである。
カパンディ関節の生理学 Ⅱ下肢

(股関節の)屈曲とは、前額面において膝を前方に移動する動きである。
その平均域は120°である。
図解関節・運動器の機能解剖 下肢編

 基本軸が体幹、移動軸が大腿、ということだけしか示しておらず、股関節、仙腸関節、骨盤などの各関節がどのように動いているのかということは何も考えていないのがROMです。

つまり、「ROMで股関節屈曲制限がある」という情報だけでは、股関節の問題なのか、骨盤の問題なのか、体幹の問題なのか?それとも筋肉の問題か、中枢の問題か?などの治療に必要なことは何も分かりません。

 

股関節屈曲は70度まで

そもそも、股関節の純粋な屈曲は70度までです。

吉尾雅春 セラピストのための解剖学 

http://www.bookhousehd.com/pdffile/msm148.pdf

ROMで言うところの「股関節屈曲」は骨盤など全身の代償によって起こっています。これを踏まえずに股関節の純粋な屈曲を無理に出そうとしてしまうと大怪我につながります。これは股関節以外でも同様です。

 

 

2種類の評価を使い分ける

リハビリの評価は2種類に分類することができます。

ROMやMMTなど、国家試験に出るようなメジャーな評価はエビデンスのための評価です。エビデンスのための評価では、肘がどれだけ曲がるか、足がどれだけ動かせるか、というようような、見かけを重視します。人体に詳しくない異業種でも体の変化を共有できる単純な評価基準が利点です。

 

ですが、リハビリを行うにあたってはROMのような単純な評価では意味がありません。足が上がらないのであれば、なぜ足が上がらないのか?関節の問題なのかそれとも別の問題なのか?といったもっと詳しい評価が必要です。

現在の日本のROMは名称が紛らわしく混乱しやすいですが、ROMは関節運動については何も語っていないということを知ると知識が整理しやすくなると思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

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進化から考える脊柱カップリングモーション2

 前回、脊柱の進化を古代生物の移動能力からご紹介しました。

脊柱は体幹を支えるだけでなく、上下肢の運動の発信源であり、歩行や巧緻動作などリハビリはすべて脊柱を考えなければいけないという内容でした。

 

今回は骨の進化から脊柱のリハビリテーションを考えます。

 

教科書のおさらい

脊柱のカップリングモーションのパターンは諸説あり、丸暗記しても臨床で役に立ちません。

一応、教科書的な記述をまとめますと、

頸椎と上部胸椎は

側屈+同側回旋

ただし上部頸椎は代償性のモーション(?)が発生

 

 

下部胸椎は

屈曲位では

側屈+同側回旋

伸展位では

側屈+反対側回旋

 

 

腰椎は

側屈+反対側回旋

 と書かれていることが多いようです。ですがこのパターンを丸暗記しても臨床では意味がありません。実際これは一例にすぎず、上下肢の運動次第では逆のパターンが発生します。つまり「なぜそうなるか」が理解できないといけません。

 

 

カップリングモーションが発生する理由

なぜカップリングモーションが発生するのか、一定のパターンがあるのか、というのは骨形状から簡単に導き出すことができますのでぜひ覚えて臨床で使える知識にしてください。

 

進化から考えるカップリングモーション

 

脊柱の原型は脊索と呼ばれる柔らかい構造体です。かなり柔軟性の高い軟骨のようなイメージ です。

脊索は柔らかいので自由度が高く、ぐにゃぐにゃと動きます。脊索を持つ生物としてナメクジウオが有名ですが、ナメクジのようにぬるぬるぐにゃぐにゃと動いています。

 

一方、脊索から進化した脊椎はカルシウムを原料とするため柔軟性は全くありません。椎間板のある関節部のみで可動します。もしも椎間関節でカップリングモーションが起こらず、純粋な屈曲や伸展をしたらどうなるでしょうか。

 クリックで動きます

このように、靭帯が大きく引き伸ばされたり押しつぶされたりします。また、脊柱の中を通る中枢神経も無理に折り曲げられます。これでは怪我や脊髄損傷のリスクが高まってしまいます。

 

そこで、内骨格生物は単純なストレート屈伸ではない別の戦略をとりました。

 クリックで動きます

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回旋です。これだと靭帯は斜めに引き伸ばされるだけですし、中枢神経も安定したままで動くことができます。ですがこれだとただぐるぐるとその場で回転する運動しかできません。

 

そこで、脊柱にカーブをつけました。

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こうすることで、より大きな運動を行うことができるようになります。

 クリックで動きます

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分かりにくいので脊柱に置き換えてみましょう。

 

これが脊柱がまっすぐな回旋です。

 クリックで動きます

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ただぐるぐる回る運動しかできません。

 

これが脊柱を屈曲した状態での回旋です。

 クリックで動きます

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正面から見たらこうなっています。

 クリックで動きます

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この運動をまとめると、

右側屈+右回旋

左側屈+左回旋

つまり、

側屈+同側回旋

 ということです。

 

つまり、カップリングモーションとは椎間板の傾斜から自然に発生する回旋運動を記述したものにすぎません。つまり椎間板の角度によって無数のパターンが発生します。徒手で「正しいカップリングモーション」を出現させるというのは不可能です。

 臨床で体幹リハビリを行うためにはカップリングモーションを理解し、自然な回旋によって導き出す方法を知る必要があります。

 

 また、腰椎は反対側回旋というのは腰椎が前傾位である場合が前提です。回し蹴りのような腰椎が屈曲位に近い場合には腰椎でも同側回旋が見られます。このように、知識や技術を臨床で使えるレベルに高めるには教科書に記載されている記述を鵜呑みにするのではなく、前提条件まで調べることが重要です。

 

 

 

 

 

 

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進化から考えるリハビリテーション 脊柱の起源とカップリングモーション

リハビリは医学の一分野なので、人間の病気について考えるところから出発しています。ですが、すでに病気になった人間について考えるには「ヒトにとって健康とは?」「ヒトにとって合理的な運動とは?」という点を考える必要があります。

 

たとえば、ヒトの関節の運動については大学ではROM程度しか教わりません。ROMは「肩屈曲」など非常に大雑把な指標で、肩甲上腕関節がどう動いたか?胸鎖関節は?肩鎖関節は?脊柱は?骨盤は?といった具体的な「めざすべきゴール」についてはあいまいです。

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カパンジー機能解剖学より

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肩は肩関節といった単純な考え方を脱却し、この図のような全身運動をしっかりとらえ、臨床で応用できるようになる必要があります。

この図では脊柱に関しては一本の矢印のみで簡単に表現してありますが、実際はもっとずっと複雑です。それら「肩→肩甲骨→脊椎一つ一つ→骨盤や頭蓋…」といった全身運動を詳細に解説した参考書は私の知る限りありません。おそらく紙の教科書では平面的な表現しかできないため記載が難しいのだと思います。これらを理解するためには3Dデータから考える必要があります。

 

これら各関節や筋肉の作用や立体的な運動方向について立体的に学ぶのが一番必要ですし、このブログや講習会でもしっかりお伝えしている部分ですが、今回は少し視点を変えて、進化から機能を考えてみようと思います。

 

古代の脊柱

ヒトの場合、脊柱はただ体幹を支えるだけの骨というイメージが強いです。そのため、リハビリでも上下肢の運動さえできれば体幹は後回しにされてしまうこともあります。

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ですが、セキツイ動物は脊柱が動かないと上下肢は動かないようにデザインされています。肩が動かないなら肩だけ、膝が動かないなら膝だけなど動かない部分だけにとらわれて体幹の評価治療をしないのは浅慮と言わざるを得ません。

 

このことは様々な理論や手技で言われていることですが、今回は医学という枠組みをいったん離れ、『脊柱の進化』という観点から解説していきたいと思います。

 

脊柱の高い運動能力

もともと生物の起源は単細胞生物です。原始的な単細胞生物は移動能力を持たず、海の中を漂っているだけでした。それが約5億年前のカンブリア紀に様々な移動能力を模索しはじめました。その時代には体表に生えた柔毛を動かすタイプ、体液の粘性を変えて回転するタイプなど、ユニークな方法で移動する生物が無数に生きていました。

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wikipediaより

 

弱肉強食の世界で最も移動能力の高い生物が生き残り、他は淘汰されてゆきました。

そこで生き残ったのが脊椎動物の祖先である脊索動物です。

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余談ですが、脊索動物には頭からしっぽまで脊索のある「頭索動物」と、しっぽのみに脊索のある「尾索動物」の二種類がいます。以前は「尾索動物」が先にできあがり、だんだんと脊索が頭側に伸びて「頭索動物」になったと言われていました。つまり、背骨の起源はオタマジャクシのしっぽである、と、私も生物の授業で習った覚えがあります

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ですが2008年に遺伝子解析により、頭索動物のほうが起源が古いということが分かりました。これは新聞にも大々的にとりあげられて感動したのを覚えています。

 

 

 

脊索を持った生物はやがてより強固な脊椎を持つ脊椎動物に進化します。ウナギのような生物です。

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脊索・脊椎を持つ生物は非常に運動能力が高く、他の生物との生存競争に打ち勝ち何万年も海底と地上で繁栄*1しています。約2万年前に反映した恐竜、現在も反映している爬虫類、両生類、鳥類、哺乳類と、大型の生物はほぼすべて脊椎動物です。動物園や水族館にいるのもほとんど100%脊椎動物ですね。

 

この脊椎の運動能力をヒレに伝えることで、魚類はさらなる進化を遂げました。

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このヒレが進化したのが人間の上下肢です。

人間の感覚では、上下肢がメインで動き体幹や脊椎の運動はオマケのように感じてしまいますが、本来の上下肢は体幹の動きを増幅させるための構造物にすぎません。

人間の上下肢は多くの機能を備えていますが、 

体幹→上下肢

という運動の発生順序は変わりないので、体幹が動かないと上下肢も動かなくなります。逆に、上下肢に何らかの問題がある場合には体幹の治療が絶対に必要です。

 

そう考えると、カパンジーの図解がいかに大雑把かが理解できると思います。

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運動初期にはまるで、肩関節運動初期には体幹運動が必要ないように見えます。

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運動中期から後期にかけても、肩が動いたから体幹に引き寄せられるという

肩→体幹

というように見えます。

この図を信じてしまうと、肩の可動域制限や麻痺などの場合には肩甲上腕関節と肩甲骨の可動性、そして脊柱の伸展だけを考えればいいような気がしてしまいます。

 

ですが実際には、脊柱がまず動き始めた結果として上下肢が動きます。

上下肢の異常は体幹の異常から発生しているため、上下肢の痛み、怪我、麻痺などは常に体幹から治療する必要があります。このことはあまりに軽視されすぎているため、体幹の治療法がほとんど研究されていないのが現状です。円背の治療すら筋トレと伸展運動などと言われてしまっています。

 

長くなってしまったので、体幹の運動についてはまた次回解説したいと思います。

 

 

 

 

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*1:単純な個体数でいえば昆虫や菌類が圧倒的に多いですが、ここでは各個体の大きさ、移動能力で考えています。

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