なぜ回旋を伴う? 脊柱の3次元構造からカップリングモーションを考える その2
前回、脊柱は純粋な側屈をすると脊髄損傷になってしまう、ということを書きました。今回は、ではどのようにしてヒトは側屈を行っているのかを書きます。
前回の記事
目次
カップリングモーションの原理
脊柱は脊髄を保護するため、基本的に回旋しかしません。
ですがこれでは側屈も屈曲もできません。
大きく体幹を動かすため、セキツイ動物は関節面を傾斜させました。
関節面が斜めになることにより、回旋すると軸がずれるようになります。
右に回旋すると右に側屈します。
これがカップリングモーションです。骨の形状から非常にシンプルにカップリングモーションを導き出すことができます。
全ての基本:軸をずらす運動
軸をずらした回旋というのは従来の平面的な運動理解ではほとんど扱われてこなかった部分ですのでイメージしにくいかもしれません。
こちら↓がコマのような軸のずれていない回旋です。一般に『回旋』というとこのような純粋なねじりをイメージすると思いますが、生物としてはかなり特殊な動きです。
こちらが軸のずれた回旋です。パラボナアンテナや傘のような円錐状の軌跡を描きます。
この軸のズレが小さければ平面関節と呼ばれ、少し大きくズレていれば膝や肘などの螺旋関節、大きくズレていれば肩関節や股関節などの球(臼)関節、と分類されます。
これが理解できると、単純な屈曲伸展を行う古典的ROMが関節を痛める原因になることも分かるようになり、より効果の高い3次元のROMを行うことができるようになります。何十年も固まって拘縮を起こしている方でもするりと動くので患者さんに驚かれます。
その場で回旋させると自然に屈伸がでてきますので、まずは「ROMは無理に引き伸ばすのではなく、とりあえずねじっておく」と覚えておいてください。
マンウェルニッケのROMの方法については以下の記事に少し書きました。
本当は全ての関節についてブログで解説できるといいのですが、画像を作るのがなかなか大変です。模型を実際に手にとって動かしてみれば一目瞭然なのですが、ブログのほうでも少しづつ書いていきたいと思います。
関節の分類を科学する
平面関節、蝶番関節などという分類は学校の教科書にも書かれている基本中の基本ですが、意味を理解せずに丸暗記するのは結構大変なものです。ですが、『軸のズレ』『脊柱の保護』などの考え方をすれば系統立てて覚えることができるので、国試対策にもなるかもしれません。
筋肉の起始停止などもいきなりヒトの筋を覚えようとすると意味不明ですが「生物がどのように進化してきたか」を考えると覚えやすくなります。
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