筋の「短縮」は拘縮の原因ではない
拘縮や可動域制限の原因として、筋が短縮しているからだ、と思ってしまっていませんか?このような考え方を出発点とするとなかなか本質が見えず手技が上達しない原因となってしまいます。
『筋の短縮』は存在しない
筋短縮による可動域制限というと一般的にはこのようなイメージだと思います。
ですがこれは筋の構造上と中枢のシステム上無理のある考え方です。
このような考えを出発点にしてしまうと「短くなっている筋を伸ばせば治るのではないか」という発想になってしまいますが、実際には無理に伸ばすと筋繊維を破壊します。
筋の持続的伸張を行う手技は沢山ありますが、私の知る限りではどの手技も単純に伸ばすのではないということにきちんと言及しています。ですが学び始めの初心者のセラピストには「ゆっくり愛護的に伸ばせばよい」という誤解をしている方も多いので、しっかりと基本の考え方を身につけてほしいと思います。
見かけ上の筋短縮が起こる原因
筋の短縮は存在しない、と言っても実際に触診してみると主動作筋ががちがちに固まっていることが多いですし、外科的な腱伸張術などで可動域が改善しますので、なかなか理解が難しいかと思います。なぜ見かけ上の筋短縮は起こるのでしょうか?
中枢と重力から考える筋短縮
筋は神経からの電気的な刺激を受けて収縮します。拘縮などの望ましくない収縮を起こすのは多くの場合、姿勢制御能力の低下や抗重力戦略のバグなどが原因です。拘縮の治療のためには拘縮した関節へのアプローチの前に全身や体幹へのアプローチが必須です。このあたりの考え方は全体像を考える機会があまいないため、しっかりプロトコルにしていきたいです。いずれブログでも書いていきます。
生理学から考える筋短縮
筋は一定方向に筋繊維が走っています。そのため、一定方向には伸張しますがそれ以外の方向には伸張しないという性質があります。
これが見かけ上の筋短縮の二つ目の原因です。これを踏まえると、ただ引き伸ばすのではなく正しい方向に引き伸ばすことが重要であるということが分かります。
一般的には、筋が短縮したから正常な伸張をしないというイメージをしがちですが、ここには筋をどのように伸張したか?という考え方が抜けています。
筋の構造を踏まえると、筋が短縮したように見える状態とは、筋の本来の運動方向とはズレた方向n引き伸ばした状態です。
関節と筋の立体構造を踏まえ、正しい方向に動かすとごく軽いタッチで数秒で変化が起きるため持続的伸張や圧迫を行う必要はありません。まずは筋の起始停止を本や図ではなく、実際の骨格模型や3Dデータで確認してしっかり立体でイメージしつつ動かしてみてください。
残念ながら現在学校で習うカリキュラムは二次元の発想が主流であり、各関節の立体的な運動方向については全く習っていないのが現状です。ですが、正しい運動方向についてよく考えることが運動リハビリの全ての基礎なので、骨格標本を確認して正しい運動方向を意識するだけで効果が全く変わってきます。
参考記事