理学療法士をはじめとするリハビリ従事者は、運動学や解剖学について学校でみっちり習って国家試験に合格し、さらに就職後にも勉強を続けます。ですので人の体がどのように動き、どこがどのようになるとどのような現象が起きるのか、そしてそれをどのように治していくのかの知識と技術はものすごくたくさん持っていて、それを日々使って患者さんと向き合います。
ですので、それぞれ得意分野は違えどセラピストは皆さん非常に高い技術と知識をお持ちです。
どんなに学んでも治せない??
それなのに、
「どんなに技術を学んでもしっくりこない」
「もっと治せるはず」
と感じてしまうセラピストは、知識や技術不足ではなくて専門知識以前の素朴で感覚的な実感が抜け落ちているのかもしれません。
丸暗記と体感の違い
たとえば、東京の電車は世界一複雑なのだそうです。
すごいですね…
もしこれがRPGのマップだったら一生クリアできそうにありません…
私は新潟に住んでいたとき、たまに東京にいくといつも道に迷っていました。
雑誌やテレビで東京の地名は知っていて興味もあって、たまに東京にいくときには地名を覚えようと路線図や地図を眺めていたのですが、本当に全く分かりませんでした。
こちらが新潟の一番都会の部分の路線図です。
http://www.nabic.info/rosenzu/gif/railway.png
新潟にいた当時は
線路は1本があたりまえ
電車は2両編成、そして座れるのがあたりまえ、
もそも駅まで車で1時間
という生活だったので、東京の路線図は根本的なところから理解できませんでした。
その状態で東京の路線図を見ると、カラフルな線と密集した地名がランダムに並んでいるようにしか見えないので駅名を丸暗記しかできず、実際に活用できる知識にならなかったのです。
体感=使える知識
でも新潟から埼玉に引っ越してきて恵比寿でお店を経営するようになってたった1ヶ月で、山手線の駅はだいたい覚えてしまいました。
実際に電車にのって「埼京線は混む」「湘南新宿ラインと埼京線はだいたい同じところに着く」「池袋は埼玉から妙に近い」などを体感することで、ごちゃごちゃのノイズでしかなかった東京の路線図が意味のあるものとして理解できるようになったからです。
学んでも満足いく結果が出せない原因
例えが長くなってしまいましたが、実際に東京の電車に乗るという体験を積むことで、丸暗記でしかなかった路線図が、きちんと活用できる生きた知識になったという話でした。
こういった現象は全ての学問に共通です。
つまり、沢山の理論や手技を覚えるだけでは実際の現場で使える手技にならず、必ず体感を伴った経験を積み重ねる必要があります。
臨床経験だけで補えないもの
ですが、学校やセミナーでは技術や手技は伝えられても体感を伝えることは難しく、現場でぶっつけ本番で覚えることしかできないのが現状です。
- どのように体感するか?
- 何をどう体感すれば治療につながるか?
を、どう学ぶかの方法論をきちんと伝えてくれる場所はあまりありません。
私自身、初期の講習会では「いかに多くの理論と手技を伝えるか」に重点を置いてしまい「理論は分かったがどう応用すればいいかわからない」「セミナーを受けて患者さんを治せるようになったが、習っていないタイプの方がいらっしゃるとどうしていいかわからなくなる」などといわれることもありました。
3Dキネシオロジーは筋の起止停止という非常に明快かつ捉えやすい指標によって生物の進化と重力やベクトルを評価治療します。ですがこれだけ明確な指標があっても、熱心に学ぶセラピストほど理論だけでは治療に自信が持てない、確信が持てないと感じてしま傾向があります。
そのため、2017年以降、3Dキネシオロジーの勉強会では体感・実感を積むことから理論を理解する(つまり実際に電車に乗ってみて駅名を覚える)方法論を実践してきました。
理論と手技を学ぶ前に、体感を積むという流れの講習会にしてから受講生の方々の技術の向上がめざましくなり、「おもしろい」「学ぶことの楽しさが分かった」「勉強への苦手意識が払拭された」「はじめて自分の手技に自信がもてた」などの感想が聞かれるようになりました。
今回は普段の記事と少し違って、技術や理論ではなく『体感』に焦点をあてることの重要性を私自身の体験を交えて書いてみました。
今後はこちらのブログでも技術のことだけでなく体感の方法論についても少しづつ書いていきたいと思います。技術に関してもブログでは初級編くらいまでしか書けていないのでもっともっと書いていきたいです。特にキネティックチェーンや抗重力作用、動作の分離における表在筋の果たす役割などはちゃんと書かなければと思っています。
長文になってしまいましたが、お読みいただきありがとうございました
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2018年初頭は『体感』セミナーをたくさん予定しています。
こちらでも少しだけ体感に触れています