進化から考える脊柱カップリングモーション2
前回、脊柱の進化を古代生物の移動能力からご紹介しました。
脊柱は体幹を支えるだけでなく、上下肢の運動の発信源であり、歩行や巧緻動作などリハビリはすべて脊柱を考えなければいけないという内容でした。
今回は骨の進化から脊柱のリハビリテーションを考えます。
教科書のおさらい
脊柱のカップリングモーションのパターンは諸説あり、丸暗記しても臨床で役に立ちません。
一応、教科書的な記述をまとめますと、
頸椎と上部胸椎は
側屈+同側回旋
ただし上部頸椎は代償性のモーション(?)が発生
下部胸椎は
屈曲位では
側屈+同側回旋
伸展位では
側屈+反対側回旋
腰椎は
側屈+反対側回旋
と書かれていることが多いようです。ですがこのパターンを丸暗記しても臨床では意味がありません。実際これは一例にすぎず、上下肢の運動次第では逆のパターンが発生します。つまり「なぜそうなるか」が理解できないといけません。
カップリングモーションが発生する理由
なぜカップリングモーションが発生するのか、一定のパターンがあるのか、というのは骨形状から簡単に導き出すことができますのでぜひ覚えて臨床で使える知識にしてください。
進化から考えるカップリングモーション
脊柱の原型は脊索と呼ばれる柔らかい構造体です。かなり柔軟性の高い軟骨のようなイメージ です。
脊索は柔らかいので自由度が高く、ぐにゃぐにゃと動きます。脊索を持つ生物としてナメクジウオが有名ですが、ナメクジのようにぬるぬるぐにゃぐにゃと動いています。
一方、脊索から進化した脊椎はカルシウムを原料とするため柔軟性は全くありません。椎間板のある関節部のみで可動します。もしも椎間関節でカップリングモーションが起こらず、純粋な屈曲や伸展をしたらどうなるでしょうか。
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このように、靭帯が大きく引き伸ばされたり押しつぶされたりします。また、脊柱の中を通る中枢神経も無理に折り曲げられます。これでは怪我や脊髄損傷のリスクが高まってしまいます。
そこで、内骨格生物は単純なストレート屈伸ではない別の戦略をとりました。
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回旋です。これだと靭帯は斜めに引き伸ばされるだけですし、中枢神経も安定したままで動くことができます。ですがこれだとただぐるぐるとその場で回転する運動しかできません。
そこで、脊柱にカーブをつけました。
こうすることで、より大きな運動を行うことができるようになります。
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分かりにくいので脊柱に置き換えてみましょう。
これが脊柱がまっすぐな回旋です。
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く
ただぐるぐる回る運動しかできません。
これが脊柱を屈曲した状態での回旋です。
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正面から見たらこうなっています。
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この運動をまとめると、
右側屈+右回旋
左側屈+左回旋
つまり、
側屈+同側回旋
ということです。
つまり、カップリングモーションとは椎間板の傾斜から自然に発生する回旋運動を記述したものにすぎません。つまり椎間板の角度によって無数のパターンが発生します。徒手で「正しいカップリングモーション」を出現させるというのは不可能です。
臨床で体幹リハビリを行うためにはカップリングモーションを理解し、自然な回旋によって導き出す方法を知る必要があります。
また、腰椎は反対側回旋というのは腰椎が前傾位である場合が前提です。回し蹴りのような腰椎が屈曲位に近い場合には腰椎でも同側回旋が見られます。このように、知識や技術を臨床で使えるレベルに高めるには教科書に記載されている記述を鵜呑みにするのではなく、前提条件まで調べることが重要です。
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