中枢性疾患の現場では
「この患者さんには拘縮がある」
「関節が硬くなってしまうから動かさなくては」
という言葉がよく聞かれます。
ですがはたしてそれは「拘縮」なのでしょうか?
たとえば、中枢性疾患では、臥位では問題ないが座位や立位をとると緊張が上がるという運動時過緊張という現象が発生します。この場合、臥位であれば関節を動かせるのであれば軟部組織には問題ないはずです。こういった方にROMエクササイズやマッサージやモビライゼーションを行うのは的外れな治療になってしまいます。
中枢性の疾患では、末梢の筋や関節を動かすだけでは根本の解決にはなりません。
拘縮=筋や靭帯などが変性すること
痙性=中枢神経系からの異常な指令により筋が過緊張になること
の二つをきちんと区別し、原因に沿ったアプローチを行う必要があります。
【「拘縮」への治療が逆効果になることも…】
過剰なマッサージや過剰な運動の後にかえって痙性が強まってしまった経験はないでしょうか。
長期間の固定などが原因で単純に委縮変性してしまった「拘縮」であれば、もみほぐしたり運動したりすることで改善します。ですが、「痙性」によって脳から過収縮の指令が出ている筋繊維を無理やり引き伸ばしてしまうと筋繊維の損傷や、過収縮が強まってしまう現象がおきます。
【そもそもなぜ「痙性」が起こるのか】
損傷した脳が『何らかの理由』で筋肉に「収縮しなさい!」という指令を過剰に送ってしまっているのが「痙性」です。
つまり『何らかの理由』を取り除くことで、痙性を治療することが可能です。
ではなぜ「痙性」という現象が起こってしまうのでしょうか。
実は「痙性」は日常生活の中で誰もが経験しています。
乗っていた電車が急ブレーキをかけたとき、足の小指をぶつけた時など、侵害刺激を感じた時に無意識に体が動いていないでしょうか。脳は自分を守るために常に指令を送っています。患者さんは脳の損傷により、外部からの情報をうまく処理できなくなっています。いわば濃い霧の中で周りに何があるのか分からないような状態です。もしそのような状態になったら足がすくんで動けず、近くの手すりにしがみつくのはごく自然な反応です。
つまり、痙性の治療では「濃い霧の中にいる状態」を解除するための適切な刺激を入れる必要があります。
今回のナイトセミナーでは、日常で経験するごく軽度の痙性を自分の体で体験することで痙性への理解を深め、目に見えにくい中枢系のアプローチを考えてゆきます。
【内容(予定)】
自分の体の筋緊張を上げてみる
不随意な筋緊張を体験してみる
筋緊張が上がった状態で「拘縮」治療と「痙性」治療を実際に受けてみる
筋緊張と随意的な収縮との違いを感じる
筋緊張を正常化するためのアプローチを実際に自分の体で体験してみる
この他、時間があれば視覚や聴覚による空間把握や感覚と筋出力の解離などを行う予定です。
今回は体験がメインの短期間のナイトセミナーですが、時間があれば治療や理論についてもお話する予定です。
【痙性を理解するための二つの視点】
痙性はごくあたりまえの防衛反応が過剰に起きてしまっているものなので、患者さんの脳がどのように外部環境を捉えているのか?を評価することで治療の方向性が見えてきます。
1・ローカル重心
尖足やマンウェルニッケや共同運動パターンやプッシャーやぶん回し歩行など、中枢系疾患の運動障害は全てこの『グローバル・ローカル重心コントロール』で説明することができます。
上肢や下肢などの重量をうまくコントロールできないと、体幹に上下肢を引き付ける共同運動パターンが発生します。ここで重要なのはどこの重心をコントロールできていないかではなく、どうしてコントロールできないか、です。上肢の屈曲が強まってしまうから上肢の伸長を促すという「拘縮(ローカル)」へのアプローチではなく、屈曲が強まる原因である体幹へのアプローチを行います。
2・ボーンリズム
内骨格生物の筋は全て螺旋状に付着しています。これは筋が伸長することによる固定力と運動の伝播の作用のためです。内骨格生物では個々の関節がもろい反面、張力による固定と伝播によって全身に運動を分散させるという戦略をとっています。たとえば膝を屈曲する際に膝関節だけでなく指先や脊柱など全ての関節が張力によって順序良く動くことで膝の負担を軽減しています。
過緊張や低緊張により筋の位置が変わってしまうことでこの自然なリズムが失われると個々の関節の可動性は大幅に下がってしまいます。中枢性疾患の方の多くが股関節屈曲パターンなど決まった動きしかできなくなるのはこれが原因です。
日時
1回目 1月29日(水)18時から21時
一回目と二回目は同じ内容です。どちらかご都合の良い日にお申込みください。
遅れる場合はご連絡ください
定員20名 最少開催人数5名
場所 新宿、杉並付近(予定)
参加費 3500円
参加資格 PT・OT・ST 学生 看護師 医師 介護士 鍼灸師 按摩マッサージ師 指圧師 整体師 ボディワーカー そのほか医療従事者など
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