進化から理学療法を考える 姿勢発達研究会のブログ

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なぜ損傷部位が違っても似たような運動麻痺が起こるのか?

脳の障害部位は多種多様

中枢系の麻痺は脳がなんらかの原因で損傷してしまった場合に起こります。

脳の血管の分布などの関係で損傷しやすい部位とそうでない部位というのはありますが、基本的には脳のどの部位が損傷するかは分かりません。CTやMRI画像を見ても一つとして同じものがない、というくらいに脳疾患はバラエティに富んでいます。

 

では、そんな多種多様な脳疾患は多種多様な症状が出るのでしょうか?

 

 

 

脳科学の教科書で、大脳皮質は身体の部位と対応している、というペンフィールドホムンクルスの図を見たことがあると思います。

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この図のように脳と身体の部位が単純に一対一対応しているとすると、たとえば手の部分が損傷したら手が動かなくなり、足の部分が損傷したら足が動かなくなるというように単純な麻痺が起こりそうな気がします。

ですが「大脳皮質の手をつかさどる部分が損傷したから手が動きません、ですが手以外は問題なく動きます」という方はいません。もしそういう方がいるとしたらそれは中枢神経系の損傷ではなく末梢神経や筋などの損傷でしょう。

 

中枢系の運動障害は一定のパターンがある

運動障害に限って考えたとき、脳の損傷部位がどの場所であってもみなさんだいたい同じような運動麻痺が起こる傾向があります。

 

脳を損傷した方の多くはマンウェルニッケと呼ばれる肢位をとります。例外も多くありますが、私の個人的な体感としては6~7割くらいはマンウェルニッケかそれに近い肢位です。歩行や下肢に関しては上肢ほど単純ではありませんが、外転歩行やぶんまわしなどいくつかのパターンに大別することができます。

なぜ中枢運動障害は単純なパターンに集約するのかを考えると、中枢疾患に対するリハビリを考える基礎になります。

 

 日常で『疑似体験』している中枢麻痺

 中枢系麻痺の特徴として、手や肩が同時に動いてしまうという共同運動パターンがあります。

指だけを動かしたいのになぜか肘や肩まで動いてしまうというのは少し不思議な感じがしますが、実はこれは私たちが日常的に体感している反射の延長線上にあります。中枢麻痺は理解不能な症状ではなく、合理的な運動をするための一戦略と言うことができます。

中枢系の麻痺のリハビリテーションを考えるとき、私たちが日常的に『擬似体験』している中枢麻痺様の状態を自覚することがポイントです。

 

 

体感から考える中枢系リハビリセミナー

ナイトセミナー

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一日セミナー

 

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進化から考えるリハビリ基礎セミナー

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開催決定!中枢を理解するための『体感』ナイトセミナーin東京 二回目

開催決定しました

様々な病態を理解する必要があり、難解に思われがちな中枢系疾患を理解し治療につなげるための「思考のフレーム」を作るためのセミナーです。

 

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内容

座学 

脳のネットワーク再構築の理論と体験

中枢系疾患では何が起こっている?

中枢系の拘縮をどう考え治療するか

無理な力をかけず、自然に動きを促通するには

実技

日常で起こる中枢疾患様の麻痺を体験

アライメントを自分の身体で再現することで、なぜ麻痺が起こるかを理解

感覚低下と痙性の関係を体験し理解する
感覚入力による痙性アプローチ

実際の患者様に対する治療法の悩みなどを共有

 

中枢を理解するための『体感』ナイトセミナーin東京


日時 4月27日(金)17時~20時
最小開催人数 3名

人数に達しない場合は開催しません。

開催決定しました。

参加費 3500円

井草地域区民センター 第1和室

西武新宿線井荻駅」(南口)から徒歩7分
http://www.city.suginami.tokyo.jp/shisetsu/katsudo/center/1006944.html

 

詳細はお申し込み後にご連絡いたします。

※※人数によって場所を変更する可能性があります。※※
前日にお送りする確認メールをご覧ください。

 

 

参加資格 PT・OT・ST 学生 看護師 医師 介護士 鍼灸師 按摩マッサージ師 指圧師 整体師 ボディワーカー そのほか医療従事者など

 

キャンセルポリシー・少人数制のため、お申し込み後のキャンセルは受け付けておりません。ご了承ください。

 

 

お申し込みはこちら

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 中枢系リハビリについての記事

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進化からリハビリを考える2:セキツイ動物としてのヒト運動戦略

以前の記事で、リハビリ医学では「病気をどう治すか」というボトムアップに注目するあまり「正しい運動パターンとは何か」というトップダウンの視点がまだ未発達ですが、生物学や物理学的に正しい運動パターンを把握しているかどうかは病気や疾患の個別対応や手技と同じくらい重要です。ということを書きました。

 

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 そして、正しい運動パターンというのをきちんと定義するためには医学ではこれまで注目されてこなかった生物学や考古学といった視点から考える必要があるということで、前回の記事では原生生物が外骨格により移動能力を獲得するまでをおさらいしました。

 

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膝関節症や脳卒中など、リハビリテーション理学療法の手技についての内容のはずなのにゾウリムシやアノマロカリスのことしか書いていませんが、身体リハビリの根幹をなす重要な考え方です。

今回はセキツイ動物はどのような運動戦略をとったのかということを書きます。

進化の流れに沿ってお話するのであれば、脊索や筋節などセキツイの特殊性から話すべきなのですが、それだとイメージがつかないと思うのでセラピストにとって馴染み深い骨格筋の話からしていきます。 

 

 

外骨格を手に入れた昆虫は高い運動能力というメリットとひきかえに、怪我しやすい身体と短い寿命というデメリットを得ました。

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基本的に、寿命と移動能力は反比例の関係になります。

ですが生物は寿命と移動能力の両方を手に入れる方法を見つけました。それが内骨格とセキツイです。セキツイ動物であるヒトは100年近い寿命と、歩いて大陸を横断できるほどの移動能力を併せ持っています。

ヒトの特性は高い知能であると言われますが、生物全体を俯瞰したときヒトの特性は知能よりもまず長い寿命と高い移動能力であると言えます。

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いったいどのようにして寿命と移動能力を手に入れたのでしょうか。

各関節の靭帯や筋などの強度を上げ、簡単には壊れないようにしたのでしょうか?

炭素化合物の集合体である生物が扱える物質には限りがあります。昆虫よりは多少丈夫とはいえヒトの骨格や関節はチタンやプラチナほどの強度を持っているわけではありませんしネジ止めしてあるわけでもありません。

つまり、ヒトの関節も昆虫とだいたい同じくらい破損しやすいと言えます。

カニを食べるときをイメージしてみてください。外骨格生物であるカニは簡単に手足をもぐことができます。ですが例えばイヌやネコの手足をもごうと思ったら相当大変だと思います(やったことはないですが。)同じくらいの強度であるはずなのに、なぜない骨格生物の関節はこれほど丈夫なのでしょうか。

 

 内骨格生物は内骨格化、つまり、骨格系を内側にして周りを大きな筋で覆うという戦略によって、もろい関節を壊れないように使うことで丈夫さを手に入れました。

イメージとしてはこんな感じです。

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外骨格生物は外力を一点で受け止めるため、関節に強い力がかかり壊れやすくなります。内骨格生物では外力が発生すると多関節筋の張力により自然に外力が全身に分散されます。これは単なる張力による物理現象なので、中枢の姿勢制御などは無関係です。

予測的姿勢制御は中枢の問題と考えられていますが、中枢は一部の筋の張力をコントロールしているだけであると考えると難解に思える中枢疾患へのリハビリに一本筋が通った理解ができます。

 

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 関節運動も同様です。

外骨格生物では膝を曲げるときに膝だけが動きます。そのため膝に負荷がかかり壊れやすくなります。

内骨格生物では膝だけ、股関節だけ、といった単関節運動は存在しません。このことは従来の学校教育では全く教えないためまるで旧来ROMのように「膝関節屈曲」などの単関節運動が存在するような錯覚をしてしまいがちです。ですが運動学の教科書をよく読むと全く真逆のことが書いてあります。ROMを教えることにより単関節運動が起こっているという重大な誤解をしてしまうことはリハビリ教育カリキュラムの大きな過失だと私は考えています。

 

 

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話が逸れてしまいましたが、内骨格生物であるヒトは膝だけ曲がるという運動はありえません。必ず全身が共同して動きます。これは近年では予測的姿勢制御と呼ばれることも多いようです。たしかに中枢の関与もありますが、単純な張力による現象なので中枢とは無関係に発生します。

 

この、多関節筋の張力による物理的な運動連鎖こそが内骨格生物の特徴であり、ヒトはこの運動連鎖をコントロールする技術が高いため二足歩行や巧緻動作を行えるようになった、と考えるとヒトはどのように動くべきかが見えてきます。

 

生物40億年の歴史を駆け足で俯瞰するという遠大なテーマでしたが、ここをしっかり理解しておくとリハビリ手技に一本筋が通ります。

 

 

次回は具体的なヒトの運動様式について書きたいと思います。

 

 

 

 

 

進化からリハビリを考える1:セキツイ動物における生存戦略

リハビリテーション理学療法を考えるとき、普通であれば『医学』からスタートします。つまりヒトの病気や障害をどう治すか?というのが出発点です。これは現代医学が感染症対策から発生したことに由来しています。

コレラチフスなどの感染症であれば、病原菌を排除するのがゴールで、健康な状態、正しい状態とは病原菌がない状態、というとてもシンプルな考え方ができます。

 

ですが、リハビリの場面では「何が正しいのか?何が合理的なのか?」というのはいろいろな要素が絡んだ複雑な問題です。その方の特性や周りの人との関係などといった社会的な側面ももちろんですが、身体機能に限定して考えたときにも「正しい姿勢」「正しい立位」「正しい歩行」などは明確に定義されていません。

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リハビリテーションでは旧来の感染症モデルにおける『正しさ』から一歩進んだ『正しさ』『合理性』を考える必要があります。ゴールについてしっかり考えることがリハビリの結果を左右するということは前回の記事で書きました。 

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安全で合理的な運動の定義

リハビリにおける『安全で合理的な運動』とは?を考えるには、そもそもヒトは生物全体からみたときにどのような生きものなのか?について理解する必要があります。

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まずは地球上の生命の進化について、駆け足で復習です。

 

生物の進化から考えるリハビリテーション

原始生物の発生

現在では生物は海底で生まれたと考えられています。その時代に地球上に酸素は無く、生物は硫黄でエネルギーを作っていました。余談ですが去年は哺乳類の硫黄呼吸についての発見がされました。ロマンがありますね。

 地球上にほとんど酸素が存在しなかった約40億年前、原始的生物は硫黄呼吸していたと考えられている。今回の研究で、生物が酸素呼吸をするようになった後も、硫黄を利用してエネルギーを生み出し続けていることが裏付けられたという。

http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201711/20171108_13006.html

原始的な生物は自分から運動しません。ただ海水の中を浮いているだけの単細胞です。それが多細胞になり様々な進化を経て運動能力を獲得しました。

ですがそれは体の回りに生えた線毛を動かしたり、細胞質の粘性を変えるゾルゲル運動であったりと、あまり能率的な運動ではありませんでした。また余談ですが、線毛は気管などで、ゾルゲル運動は白血球や遊走細胞でヒトでも観察することができます。硫黄呼吸を40億年も使っていたりと、一度作ったシステムはとことん使い倒すのが地球生物の流儀です。

自分で動くことのできる生物はエサを探して移動することができる、捕食されそうになったら逃げることができるなど生きる上で有利です。生物は様々な方法で移動能力を獲得しようと模索しはじめました。

外骨格のイノベーション

 カンブリア紀の生物として有名なアノマロカリスは高い移動能力を持っていたため繁栄できたのではないかといわれています。

高い移動能力を求めた古代生物は外骨格というイノベーションを起こしました。クワガタやカブトムシのような堅い殻で覆われた生きものです。外骨格は身体の軽量化とすばやい運動を可能にしました。しかし壊れやすく寿命が短いこと、循環の関係で大きく成長できないという欠点があります。

 

怪我が多く寿命が短い昆虫

動かないことで繁栄したのが植物で、より早く、より機敏に動くことで多くのエサを獲得する、車でたとえるなら燃費は悪いが高性能なスポーツカーのような進化をしたのが昆虫といえます。

図にするとこのようなイメージ。

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移動しない植物は数百年と長い年月を生きることができます。

移動能力の高い昆虫はその分消耗が激しく、寿命は長くても数年です。また、クワガタやザリガニの手足がもげているのを見たことのある人もいると思います。昆虫の関節は脆いので外力で簡単に傷つきます。(その分再生能力も高いのですが。)

余談:網膜と寿命の関係

運動能力とは少し違いますが、昆虫の目についても同じような戦略で進化しています。多くの昆虫は人間にはみることのできない紫外線を見ることができます。紫外線は網膜を焼いてしまうため紫外線を見ることの出来る昆虫はいずれ失明します。ですが昆虫は失明する前に寿命がくるので不便を感じません。

人間の場合は80年近い期間、網膜を保護しなければいけないので、水晶体を作ってわざと紫外線をカットしています。

 

寿命と移動能力の相関関係を超える

原生生物→植物→昆虫 という流れの中ではまだ、寿命と移動能力のどちらかしか獲得できませんでした。寿命が長く移動能力も高い生物が現れるにはセキツイ動物の出現を待たなくてはなりません。

 

リハビリの話をしているはずなのに、なかなかヒトの話までたどり着けませんが(汗)次回はセキツイ動物の能力について書いていきます。

 

現在、我々が目にする生き物の大半はヒトです。ヒト以外ではペットの犬や猫、スーパーで売っている牛や豚、野生のカラスやスズメ、ヘビやトカゲなど、ほとんど全てセキツイ動物です。なのでセキツイ動物があたりまえのように感じてしまいますが、実はセキツイ動物は運動能力と寿命の長さに特化した生物です。

 

 

今回は生物の進化について、とくにリハビリに関係する運動機能のみをピックアップして駆け足で解説しています。かなりダイジェストにしているので不正確な部分もあります。

詳しくは講習会でしっかりお話する予定です。

 

進化とリハビリ第一弾

講習会についてはこちらからご覧下さい。

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 その他の講習会一覧

7月にCVAを感覚的に理解するボディワークセミナー開催します。

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ゴール設定が回復のカギ。 より効果のあるリハビリのための、ゴール設定の方法について

リハビリでは、全ての患者様にどのような動作を行えることを目的にするかにゴール設定をすると思います。ゴール設定の際、歩けないなら歩けるようになる、立ち仕事なら長時間立てるようになる、など、できないことをやれるようになるというADL目線でゴール設定をしてしまっていませんか?

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ゴール設定の基本

今回の記事では、リハビリにおけるゴール設定の考え方の前に、基本の部分について書いておきます。

 

これは発達学の復習ですが、ヒトの運動発達では、ねがえり→起き上がり→立位→歩行というように必ず一定のルートがあります。

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ねがえりができないのに走る立位は取れる、とか、立つことはできないのに走ることはできる、というようなことはありえません。ハイレベルな運動を獲得するためには、必ず低レベルな運動をクリアしている必要があります。

ですが、たとえば「立位」にも様々なパターンがあって、立位がとれれば必ず歩行ができるというわけではありません。おなじ「立位」でも歩行に繋がる正解ルートと、立位でとまってしまう行き止まりルートがあります。

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実際に自分の身体で試してみてください。骨盤を過前傾した立位や強い円背の立位での歩行はとても大変だったと思います。膝や腰の怪我や痛みにも繋がります。

目標とするゴールが「立位」だとしても、なんでもいいから立てていればよいというのではなく、立位→歩行という将来を見据えたより合理的な立位を獲得するというのがリハビリのゴール設定になります。

 

 と、いうところまでは理学療法士作業療法士であればよくご存知だと思います。感覚的にも理解しやすい部分です。

 

では「よりハイレベルな動作獲得を見据えた合理的なゴール」とは具体的にどのようなものなのか、はっきりとした定義を答えられる人はいるでしょうか。

そもそも、医療系の教育では病気の治し方を重点的に教えるため、ヒトの最も合理的な動作とは何か、という生物学や物理学に関してはあまり考えられていないのが実情です。

 

間違ったゴール設定はリスクと苦労を増大させる

よりハイレベルな運動を獲得できる運動、が正しいゴールでありリハビリテーションにおいて目標とすべきものです。

 

 

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なんでもいいから立てればいい、だから立つ練習をすればいい、立てるようになったらひたすら歩く練習をすればいい、という素人さんの発想だと、正しい運動獲得のルートに乗れず非常に苦労する上に本来の能力より低いレベルの運動までしか獲得できません。

リハビリテーション理学療法という発想が無かった時代には、歩けないなら歩く練習をすればいい、という努力と根性式発想で多くの患者様が怪我をしてしまったり本来の力を発揮できなかったりということが相次いだためリハビリの研究が進み専門職が生まれました*1

 

つまり、不要な苦労なしにより安全でハイレベルな運動を患者様に獲得していただくためには、『何が正しいゴールなのか?』に明確な定義を裏づけに自信をもって答える必要があります。

逆に、正しいゴール=目指すべきもの を明確に理解すればするほど、より合理的で効果のあるリハビリを行えるようになります。

 

進化から考える、ヒトの合理的な運動パターン

では、正しい運動とは何なのか、を考えたとき、あまりに『正常』ついての定義がずさんであるということに愕然とします。

 

たとえば、教科書には基本肢位と解剖学的肢位というものが載っています。これがPTのイメージする素朴な「正しい姿勢」だと思います。

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ですが、現実にこのような姿勢の人はいませんし、この姿勢で日常生活を送ることもできません。この立位ができても歩行には繋がりません。この立位を目指してもあまり意味はありません。

 

また、脊柱は生理的なS字カーブを描くのが理想とされています。

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これも教科書的には自明のことのように感じられますが、では実際臨床の場でどのような姿勢が正しいのかと言われると明確な答えを出せるセラピストはほとんどいないのではないでしょうか。反り腰と平背、どちらがよいかなどという論争もときどき見かけます。

教科書的には一見疑問の余地なく正しい姿勢や運動のように感じられても、いざ臨床に立つと何を目指すべきか分からなくなると、結果として間違ったゴールを目指してしまう、ということになってしまいます。

 

「正常=合理的な運動パターンとは何か」の答えは、そもそもヒトの身体はどのような使用目的を想定してデザインされているか、セキツイ動物はどのように進化してきたか、を考えるとおのずと見えてきます。

次回以降、進化と発達から考えるヒトの運動パターンについてを書いていきます。

 

3月に静岡で、5月に埼玉で進化とリハビリについての講習会を行います。

 

 

進化と発達から考えるリハビリテーション

日時

静岡講座は締め切りました。ご参加ありがとうございました。

埼玉は引き続き受付中です。

静岡 3月3日(土)10時から16時

   場所:マッターホルン 静岡駅より徒歩8分

https://www.matterhorn4478.com/%EF%BD%8D%EF%BD%81%EF%BD%90/

 

埼玉 5月26日(土)27日(日)10時から16時

   場所:埼玉県蓮田市周辺

 

参加費

 一日のみ12000円 2日同時20000円

再受講 1日のみ8000円 2日同時14000円

これまで基礎編・上肢編・下肢編・体幹編のどれかを受けたことのある方は再受講となり割引となります。

 

 

 

参加資格 

PT・OT・ST 学生 看護師 医師 介護士 鍼灸師 按摩マッサージ師 指圧師 整体師 ボディワーカー そのほか医療従事者など

 

 

お支払い方法・お申し込みから2週間以内にカードまたは銀行振り込みをお願いします。詳細は申し込み後のメールにてご案内します。

キャンセルポリシー・少人数制のため、お申し込み後のキャンセルは受け付けておりません。ご了承ください。

定員 5名程度

 

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その他の講習会一覧

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*1:今回は身体リハビリ、主にPTについてのみ考えていますので立位や歩行といった運動にスポットを当てていますが、実際のリハビリは身体分野だけではなく幅広い分野で行われています。

中枢麻痺は『体験』できないから難しい?への回答

前回、セロハンテープを使って感覚麻痺を疑似体験してみると、触圧覚が立位や歩行に大きく影響を及ぼしていることが分かる、というごく簡単なワークをご紹介しました。

 

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ですが、これは末梢神経系の麻痺を擬似的に再現したものにすぎず、より治療が難しい中枢系の麻痺には応用できないのではないか?という質問をいただきました。

学生さんなど、「中枢麻痺の方の歩行を再現してごらん」というと、見かけの関節角度だけを再現してしまい「それは単なる廃用性拘縮とどう違うの?」と聞いても答えられない…というバイザーの先生の苦労話は私もよく聞きます。

 

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中枢麻痺は理解不能??

現在の教育カリキュラムでは正確な知識を身につけることを最優先するため「なぜ、そうなるか?」という根本を教わる機会が少なくなっています。そのため

  • 中枢系は難しい
  • 中枢系は感覚的な理解ができない
  • そもそも、単なる拘縮と中枢麻痺の違いが分からないからROMしかできない…

などということも起こってしまいます。

ですが、学校で習うような旧式のROMやMMT脳卒中パーキンソン病などの中枢系疾患の方に行うのは大変危険です。効果がないだけならまだしも麻痺を悪化させ二次障害を引き起こしてしまいます。

 

中枢系のリハビリテーションを理解する第一歩として、中枢麻痺とは何か?をごくごく簡単に、知識より前にまず『体感』することが必要です。

 

中枢麻痺が疑似体験できる理論

まず、運動制御のシンプルな模式図を書きました。

目や耳、筋紡錘といった感覚器からの入力系からの情報を脳が分析し、筋へ指令を出すことで運動が起こります。運動制御は本当はもっとずっと複雑ですが、まずはこのような理解で話を進めます。

 

末梢障害の場合

末梢の運動障害の場合、運動出力系のみが動かなくなります。

(現実には末梢神経損傷で運動出力系のみが動かなくなることはまずありませんが、ここでは単純化して考えています)

 

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この状態を疑似体験するには、筋出力を十分発揮できない状態、つまり手足に錘をつけるなどすれば可能です。

 

 

中枢障害の場合

そして中枢障害の場合は情報を分析する脳が損傷するので、感覚器からの正しい入力があっても脳が正しく理解できず、運動の指示が出せなくなります。

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脳は完全に無意識に働いていますから、健康な人が脳の働きを抑制することは不可能です。よって、中枢麻痺を完全に再現することはできません。

これが中枢系が難しいとされる根本の理由です。

ですが、脳が損傷した状態は再現できなくても、脳が正常に働けない状態は再現可能です。

 

感覚障害の場合

これは末梢の感覚障害の模式図です。

末梢からの感覚入力が異常だと、脳は正しい情報が受取れず正しい判断ができません。

 

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これは非常に大雑把ではありますが、脳が正常に働けない状態、つまり中枢系麻痺を擬似的に再現した状態です。

 

バランスを崩したときや、重いものを持つときなど、普段意識しないと気づかないかもしれませんが、私たちは知らず知らずのうちに共同運動パターンのような動作をしています。この体験に気づくことが中枢系理解の第一歩です。

 

以前書いた、セロハンテープを手に貼って巧緻動作を行うワークをもう一度改めてやってみてください。

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おそらく、セロハンテープを貼っての巧緻動作では、肘が屈曲し肩が外転するウェルニッケ様パターンで動作をしていたはずです。

 

マンウェルニッケも外転歩行も、肘が曲がっていること、手指が伸びないこと、下肢が外転すること、それ自体が問題なのではありません

 

脳が正常に情報を分析できず、合理的な抗重力戦略を取れないことが問題です。

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つまり、いくら肘や足を伸ばそうとしても根本の原因を把握していないと関節を痛め拘縮を強めるだけです。

中枢系のリハビリを考えるときには、重力と重心、剛体力学という視点で考えるようにしてください。

 

 

1月の無料セミナーと、3月の中枢系セミナーでは、ここでご紹介したものだけでなく、様々な体感から重力について考えていきます。

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セロハンテープを使って感覚麻痺を疑似体験する方法

 

今回は、感覚麻痺が運動に及ぼす影響について、体感して治療に活かしていく方法をひとつご紹介します。

 

また、今回の記事では主に末梢の感覚麻痺について考えていますが、これはCVAやパーキンソンなどの中枢系の麻痺を考える上でも重要な考え方になります。中枢系の考え方はこちらにまとめました。

 

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感覚麻痺が運動に及ぼす影響

作業療法士言語聴覚士であれば感覚を重視する場面もあるでしょうが、運動機能に注目する理学療法士の場合、感覚麻痺=凸凹が分からなくて困る、くらいの認識の方も多いのではないでしょうか。

実はほんの少し感覚が麻痺しただけでも歩行や巧緻動作に大きな影響があります。

運動療法をしても治らない、筋力や可動域には問題ないはずなのになぜかできない、などの原因の一つとして感覚麻痺による運動機能障害があります。

 

今回は麻痺などのない健康な人でも理解しやすいよう、レベルの高い巧緻動作を例に挙げます。

1事前評価

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箸を使って小さな米粒を皿から皿に移してみてください。麻痺などがなければ大概の方はできる動作だと思います。

2麻痺を擬似的に再現

次にセロハンテープを小指に巻きつけてください。

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これで小指の皮膚感覚が軽度麻痺した状態を擬似的に再現したことになります。

3予測

箸を使う動作に関係ない小指の先、しかも触覚が鈍くなっただけ、というほんの些細な麻痺体験です。

感覚麻痺=でこぼこが分からなくて困る

というだけであれば、前出の巧緻動作には全く問題なく行えるはずです。

 

4再評価

もう一度先ほどの箸で米を移動させる動作を行ってみてください。

おそらく、思った以上にやりにくくなっているはずです。肩や腕に無駄な力が入ってしまい知らず知らずのうちに共同運動パターンに近い動作になっていたのではないでしょうか。

 

5治療

小指にセロハンテープを貼ったまま、つまり、感覚麻痺の回復が望めない状態でも運動能力を向上させなければいけない場面は多々あります。そのような場合に使える治療法について簡単にご紹介します。

ここでは一番単純な治療法を試してみます。

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この方法を行うと、小指にセロハンテープを貼ったままでも巧緻動作がしやすくなっているはずです。

これは感覚入力を増やすことで感覚の異常を中枢系で補正することができるようになるからです。

5まとめ

ほんの少しの感覚麻痺でも、このように動作に大きな影響が出るため、リハビリを行う際には感覚麻痺の有無を知ることが重要になります。また、感覚麻痺を治療せずに運動を行うと能率が悪く異常パターンを強化してしまうため、運動リハの前に感覚へのアプローチが必須です。

 

運動能力の向上について考えていると身としてしまいがちな感覚麻痺ですが、リハビリはまず感覚へのアプローチをしないと何も始まらないというくらい重要です。

運動へのアプローチだけではうまくいかない場合には感覚のことを思い出してほしいと思います。

 

 

2018年1月に体感の無料セミナーを開催します

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3月のCVAセミナーではこのような体験を多く盛り込んでいく予定です

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