進化から理学療法を考える 姿勢発達研究会のブログ

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二回目開催決定・中枢系を理解するためのボディワークセミナーin埼玉

2018年10月に二回目を開催します。

 

 

今回は少し変わった形式の中枢系セミナーを予定しています。

 

 

 

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中枢系は難しい?

CVAやパーキンをはじめとする中枢系の疾患は末梢系や怪我などと比べ多様な障害像があり理解が難しいため苦手意識を持つセラピストが多いようです。

実際、「もし骨折したら骨折部位が痛いだろう」「もし尺骨神経が麻痺したら小指が動かないだろう」などと想像することはできますが、共同運動パターンがみられる中枢系麻痺に関してはどうしてそうなるのかが感覚的に理解できないかもしれません。

 

中枢系に安易なROMexは禁忌です。

卒業したての新人セラピストであれば、たとえばマンウェルニッケ肢位をみて「肘の拘縮だ」と考えて肘のROMを行ってしまうかもしれません。

ですが中枢系の麻痺は単純な拘縮ではないのでどんなに愛護的に肘を伸ばそうとしても周囲の関節や筋を痛め二次障害が起こってしまいます。「なぜ、肘が伸びないのか?」をきちんと理解するのが安全で効果的な中枢リハビリの第一歩です。

動作分析が理解の根幹

患者様の体の使い方を観察分析し、どこに負担がかかり、どこをかばって動いていらっしゃるのか、そしてどのように動けばより合理的かを考えるのが動作分析です。正確な動作分析ができなければ分析も考察も行えず、あてずっぽうの治療しかできません。

逆に、動作分析をしっかり行い、自分の身体で運動を再現できれば根拠のある効果的な治療が行えるようになります。

動作分析は大変重要ですが、重要なあまり苦手意識を持ってしまうセラピストもいるようです。

中枢麻痺は『感覚的な理解』が必要

冒頭で「健康な状態では中枢麻痺の状態を想像するのは難しい」と書きました。関節や筋には問題ないはずなのに、なぜ肘が伸びないのか、なぜ指が分離できないのか、神経学的な理論を学ぶことはできてもそれがどういう状態かを感覚的に想像することはとても難しいのではないでしょうか。

中枢麻痺は見かけの姿勢だけを真似しても理解できません。みかけだけマンウェルニッケの肢位や外旋歩行をまねしても、それは肘や股関節の可動域制限がある人の真似であって中枢麻痺の動作分析にはならず、結果として正しい治療ができなくなってしまいます。

中枢麻痺の根幹は体幹と感覚

中枢麻痺の動作分析を行うためには体幹を理解する必要があります。

脊柱、体幹の運動を分析することで中枢麻痺の共同運動パターンの発生機序を理解することができ、きちんとした治療を行うことができるようになります。

感じる、体感の大切さ

中枢系に苦手意識を感じてしまうのは、感覚的、直感的な理解を経ずにいきなり理論を詰め込まれてしまうからではないでしょうか。理論だけを詰め込むのは、全く知らない町の地名を覚えるようなものです。

「共同運動パターンで動くってどういう感じ?」

「異常感覚ってどういう感覚?」

など、素朴で直感的な理解を積み重ねることで、難しい理論も自然に理解することができます。また、すでに理論を十分理解している理学療法士も感覚的な理解を体験することでこれまでの知識が統合され、さらに高度なリハビリが可能になります。

 

中枢系を理解するためのボディワークセミナーin埼玉

日時 10月20日(土)10時から16時 二回目

 

参加費 12000円

 

場所 岩槻駅東口コミュニティセンター

岩槻駅東口コミュニティセンター/公益財団法人さいたま市文化振興事業団

 

参加資格 PT・OT・ST 学生 看護師 医師 介護士 鍼灸師 按摩マッサージ師 指圧師 整体師 ボディワーカー そのほか医療従事者など

 

お支払い方法・お申し込みから2週間以内にカードまたは銀行振り込みをお願いします。

キャンセルポリシー・少人数制のため、お申し込み後のキャンセルは受け付けておりません。ご了承ください。

定員 5名程度

 

お申し込みはこちら

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拘縮を治すためのROMの考え方

学校で習う関節可動域、いわゆるROMはリハビリの評価や治療に使ってはいけない評価だというのは、ある程度経験を積んだ理学療法士であれば誰でもご存じだと思います。

 

肩関節、股関節、など、『関節』という言葉を使っているので紛らわしいのですが、ROMでは『関節』については一切考慮していません。

 

「股関節屈曲制限がある」

と言われたら、ついつい

「ではROMエクササイズを行い股関節の可動域を広げればいい」

と思ってしまいがちです。

 

ですがこれは大きな誤解です。ROMやMMT治療に使うべきではない評価です。

 

 

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ROMの定義を再確認

以下は股関節屈曲についての定義です。

股関節の屈曲は、下肢全体が股関節を通る前額面の前方へくるように大腿前面を体幹に近づける動きのことである。
カパンディ関節の生理学 Ⅱ下肢

(股関節の)屈曲とは、前額面において膝を前方に移動する動きである。
その平均域は120°である。
図解関節・運動器の機能解剖 下肢編

 基本軸が体幹、移動軸が大腿、ということだけしか示しておらず、股関節、仙腸関節、骨盤などの各関節がどのように動いているのかということは何も考えていないのがROMです。

つまり、「ROMで股関節屈曲制限がある」という情報だけでは、股関節の問題なのか、骨盤の問題なのか、体幹の問題なのか?それとも筋肉の問題か、中枢の問題か?などの治療に必要なことは何も分かりません。

 

股関節屈曲は70度まで

そもそも、股関節の純粋な屈曲は70度までです。

吉尾雅春 セラピストのための解剖学 

http://www.bookhousehd.com/pdffile/msm148.pdf

ROMで言うところの「股関節屈曲」は骨盤など全身の代償によって起こっています。これを踏まえずに股関節の純粋な屈曲を無理に出そうとしてしまうと大怪我につながります。これは股関節以外でも同様です。

 

 

2種類の評価を使い分ける

リハビリの評価は2種類に分類することができます。

ROMやMMTなど、国家試験に出るようなメジャーな評価はエビデンスのための評価です。エビデンスのための評価では、肘がどれだけ曲がるか、足がどれだけ動かせるか、というようような、見かけを重視します。人体に詳しくない異業種でも体の変化を共有できる単純な評価基準が利点です。

 

ですが、リハビリを行うにあたってはROMのような単純な評価では意味がありません。足が上がらないのであれば、なぜ足が上がらないのか?関節の問題なのかそれとも別の問題なのか?といったもっと詳しい評価が必要です。

現在の日本のROMは名称が紛らわしく混乱しやすいですが、ROMは関節運動については何も語っていないということを知ると知識が整理しやすくなると思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

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進化から考える脊柱カップリングモーション2

 前回、脊柱の進化を古代生物の移動能力からご紹介しました。

脊柱は体幹を支えるだけでなく、上下肢の運動の発信源であり、歩行や巧緻動作などリハビリはすべて脊柱を考えなければいけないという内容でした。

 

今回は骨の進化から脊柱のリハビリテーションを考えます。

 

教科書のおさらい

脊柱のカップリングモーションのパターンは諸説あり、丸暗記しても臨床で役に立ちません。

一応、教科書的な記述をまとめますと、

頸椎と上部胸椎は

側屈+同側回旋

ただし上部頸椎は代償性のモーション(?)が発生

 

 

下部胸椎は

屈曲位では

側屈+同側回旋

伸展位では

側屈+反対側回旋

 

 

腰椎は

側屈+反対側回旋

 と書かれていることが多いようです。ですがこのパターンを丸暗記しても臨床では意味がありません。実際これは一例にすぎず、上下肢の運動次第では逆のパターンが発生します。つまり「なぜそうなるか」が理解できないといけません。

 

 

カップリングモーションが発生する理由

なぜカップリングモーションが発生するのか、一定のパターンがあるのか、というのは骨形状から簡単に導き出すことができますのでぜひ覚えて臨床で使える知識にしてください。

 

進化から考えるカップリングモーション

 

脊柱の原型は脊索と呼ばれる柔らかい構造体です。かなり柔軟性の高い軟骨のようなイメージ です。

脊索は柔らかいので自由度が高く、ぐにゃぐにゃと動きます。脊索を持つ生物としてナメクジウオが有名ですが、ナメクジのようにぬるぬるぐにゃぐにゃと動いています。

 

一方、脊索から進化した脊椎はカルシウムを原料とするため柔軟性は全くありません。椎間板のある関節部のみで可動します。もしも椎間関節でカップリングモーションが起こらず、純粋な屈曲や伸展をしたらどうなるでしょうか。

 クリックで動きます

このように、靭帯が大きく引き伸ばされたり押しつぶされたりします。また、脊柱の中を通る中枢神経も無理に折り曲げられます。これでは怪我や脊髄損傷のリスクが高まってしまいます。

 

そこで、内骨格生物は単純なストレート屈伸ではない別の戦略をとりました。

 クリックで動きます

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回旋です。これだと靭帯は斜めに引き伸ばされるだけですし、中枢神経も安定したままで動くことができます。ですがこれだとただぐるぐるとその場で回転する運動しかできません。

 

そこで、脊柱にカーブをつけました。

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こうすることで、より大きな運動を行うことができるようになります。

 クリックで動きます

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分かりにくいので脊柱に置き換えてみましょう。

 

これが脊柱がまっすぐな回旋です。

 クリックで動きます

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ただぐるぐる回る運動しかできません。

 

これが脊柱を屈曲した状態での回旋です。

 クリックで動きます

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正面から見たらこうなっています。

 クリックで動きます

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この運動をまとめると、

右側屈+右回旋

左側屈+左回旋

つまり、

側屈+同側回旋

 ということです。

 

つまり、カップリングモーションとは椎間板の傾斜から自然に発生する回旋運動を記述したものにすぎません。つまり椎間板の角度によって無数のパターンが発生します。徒手で「正しいカップリングモーション」を出現させるというのは不可能です。

 臨床で体幹リハビリを行うためにはカップリングモーションを理解し、自然な回旋によって導き出す方法を知る必要があります。

 

 また、腰椎は反対側回旋というのは腰椎が前傾位である場合が前提です。回し蹴りのような腰椎が屈曲位に近い場合には腰椎でも同側回旋が見られます。このように、知識や技術を臨床で使えるレベルに高めるには教科書に記載されている記述を鵜呑みにするのではなく、前提条件まで調べることが重要です。

 

 

 

 

 

 

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進化から考えるリハビリテーション 脊柱の起源とカップリングモーション

リハビリは医学の一分野なので、人間の病気について考えるところから出発しています。ですが、すでに病気になった人間について考えるには「ヒトにとって健康とは?」「ヒトにとって合理的な運動とは?」という点を考える必要があります。

 

たとえば、ヒトの関節の運動については大学ではROM程度しか教わりません。ROMは「肩屈曲」など非常に大雑把な指標で、肩甲上腕関節がどう動いたか?胸鎖関節は?肩鎖関節は?脊柱は?骨盤は?といった具体的な「めざすべきゴール」についてはあいまいです。

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カパンジー機能解剖学より

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肩は肩関節といった単純な考え方を脱却し、この図のような全身運動をしっかりとらえ、臨床で応用できるようになる必要があります。

この図では脊柱に関しては一本の矢印のみで簡単に表現してありますが、実際はもっとずっと複雑です。それら「肩→肩甲骨→脊椎一つ一つ→骨盤や頭蓋…」といった全身運動を詳細に解説した参考書は私の知る限りありません。おそらく紙の教科書では平面的な表現しかできないため記載が難しいのだと思います。これらを理解するためには3Dデータから考える必要があります。

 

これら各関節や筋肉の作用や立体的な運動方向について立体的に学ぶのが一番必要ですし、このブログや講習会でもしっかりお伝えしている部分ですが、今回は少し視点を変えて、進化から機能を考えてみようと思います。

 

古代の脊柱

ヒトの場合、脊柱はただ体幹を支えるだけの骨というイメージが強いです。そのため、リハビリでも上下肢の運動さえできれば体幹は後回しにされてしまうこともあります。

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ですが、セキツイ動物は脊柱が動かないと上下肢は動かないようにデザインされています。肩が動かないなら肩だけ、膝が動かないなら膝だけなど動かない部分だけにとらわれて体幹の評価治療をしないのは浅慮と言わざるを得ません。

 

このことは様々な理論や手技で言われていることですが、今回は医学という枠組みをいったん離れ、『脊柱の進化』という観点から解説していきたいと思います。

 

脊柱の高い運動能力

もともと生物の起源は単細胞生物です。原始的な単細胞生物は移動能力を持たず、海の中を漂っているだけでした。それが約5億年前のカンブリア紀に様々な移動能力を模索しはじめました。その時代には体表に生えた柔毛を動かすタイプ、体液の粘性を変えて回転するタイプなど、ユニークな方法で移動する生物が無数に生きていました。

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wikipediaより

 

弱肉強食の世界で最も移動能力の高い生物が生き残り、他は淘汰されてゆきました。

そこで生き残ったのが脊椎動物の祖先である脊索動物です。

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余談ですが、脊索動物には頭からしっぽまで脊索のある「頭索動物」と、しっぽのみに脊索のある「尾索動物」の二種類がいます。以前は「尾索動物」が先にできあがり、だんだんと脊索が頭側に伸びて「頭索動物」になったと言われていました。つまり、背骨の起源はオタマジャクシのしっぽである、と、私も生物の授業で習った覚えがあります

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ですが2008年に遺伝子解析により、頭索動物のほうが起源が古いということが分かりました。これは新聞にも大々的にとりあげられて感動したのを覚えています。

 

 

 

脊索を持った生物はやがてより強固な脊椎を持つ脊椎動物に進化します。ウナギのような生物です。

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脊索・脊椎を持つ生物は非常に運動能力が高く、他の生物との生存競争に打ち勝ち何万年も海底と地上で繁栄*1しています。約2万年前に反映した恐竜、現在も反映している爬虫類、両生類、鳥類、哺乳類と、大型の生物はほぼすべて脊椎動物です。動物園や水族館にいるのもほとんど100%脊椎動物ですね。

 

この脊椎の運動能力をヒレに伝えることで、魚類はさらなる進化を遂げました。

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このヒレが進化したのが人間の上下肢です。

人間の感覚では、上下肢がメインで動き体幹や脊椎の運動はオマケのように感じてしまいますが、本来の上下肢は体幹の動きを増幅させるための構造物にすぎません。

人間の上下肢は多くの機能を備えていますが、 

体幹→上下肢

という運動の発生順序は変わりないので、体幹が動かないと上下肢も動かなくなります。逆に、上下肢に何らかの問題がある場合には体幹の治療が絶対に必要です。

 

そう考えると、カパンジーの図解がいかに大雑把かが理解できると思います。

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運動初期にはまるで、肩関節運動初期には体幹運動が必要ないように見えます。

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運動中期から後期にかけても、肩が動いたから体幹に引き寄せられるという

肩→体幹

というように見えます。

この図を信じてしまうと、肩の可動域制限や麻痺などの場合には肩甲上腕関節と肩甲骨の可動性、そして脊柱の伸展だけを考えればいいような気がしてしまいます。

 

ですが実際には、脊柱がまず動き始めた結果として上下肢が動きます。

上下肢の異常は体幹の異常から発生しているため、上下肢の痛み、怪我、麻痺などは常に体幹から治療する必要があります。このことはあまりに軽視されすぎているため、体幹の治療法がほとんど研究されていないのが現状です。円背の治療すら筋トレと伸展運動などと言われてしまっています。

 

長くなってしまったので、体幹の運動についてはまた次回解説したいと思います。

 

 

 

 

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*1:単純な個体数でいえば昆虫や菌類が圧倒的に多いですが、ここでは各個体の大きさ、移動能力で考えています。

動的バランスには、支持基底面が小さくて多いほうが有利

大脳の錯覚を考えるシリーズの3日目です。

 

今回は支持基底面の大きさとバランスについてです。

支持基底面は大きいほど安定すると思ってしまっていませんか?

 

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これはマネキンのように動かない物体であれば正解ですが、ヒトのように柔軟性があり常に動いている物体には適応しません。支持基底面が大きな物体は少しでも動くと基底面がなくなってしまうからです。人間の場合、重心動揺が常に起こっているため基底『面』がいくら広くても意味がありません。

 

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足底の接地面積が大きいほど安定するというのも誤解の一つです。

 

動く物体は支持基底面が限りなくゼロ、つまり『面』ではなく『点』にならざるをえません。ですが、尖足のように足底を一点のみで支えると不安定になり転倒してしまいます。よく問題になる尖足は『接地面が狭くなること』ではなく『接地面が広くなり運動に対応できないこと』が問題と言えます。

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転倒の字が間違っていますが気にしないでください…

 

このジレンマを解消するために、ヒトの足底は「面ではなく複数の移動する点で支える」というシステムを採用しています。

 

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つまり、尖足の治療は接地面を増やすのではなく、接地点を増やす、つまり足部の関節群の柔軟性と随意性を高めることです。(足関節の柔軟性と言っても、むりにモビライゼーションして関節をゆるくするのは禁忌です。あくまで全身、とくに体幹の随意性を高めた結果として足底の随意性も高まるという流れになります)

 

ハンズオン時の手の使い方

話が脱線してしまいましたが、尖足と中枢疾患リハビリについてはまた次回にゆずることにして、今回は「ハンズオン時の手の使い方」についてお話します。

患者様の体を触るとき、どのようなことを気を付けていますか?

運動時には面ではなく複数の点で支えるという原則を踏まえると、患者様の体を触るときにも面ではなく点で触れる必要があるということが分かると思います。べたっと手の平全体を巻きつけるように触れると接地面が広くなります。この状態で無理に動かそうとすると筋力で力任せに動かすことになります。

ですが、指先や拇指球などを利用し点で触ることを意識すると軽く動かすことができます。

 

先入観を超える

接地面が広いほど安定し、力を伝えやすいという思い込みは非常に強固です。

患者様に点で触れる、点で動かすというのははじめは違和感が強いと思います。ですが「べたっと触って力任せに動かすのがあたりまえ」という刷り込まれた先入観を払拭すると、患者様にとって最も安心感があり効果のあるリハビリが行えるようになります。

とくに中枢疾患の急性期では全身が完全に弛緩しているため「べたっと触って力任せに動かす」というROMを行ってしまうと予後に影響しますので十分注意してください。

 

 

 

 

 

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結果の出るROMを行うための立体理解

前回、ヒトの大脳は立体理解が苦手なため、あたかも平面上を動いているように錯覚するということを書きました。その錯覚のままリハビリを行ってしまうと関節を間違った方向に無理に動かすことになるため可動域が改善しなかったり筋緊張を高くしてしまうなど様々な弊害があります。

ROM上達を妨げる要因

今回はもっとも一般的な大脳の錯覚を一つ紹介します。

これはほとんどの理学療法士は理解していますが、たまに絶望的にROMが苦手な実習生さんなどはこの錯覚を持っていることがありますので注意してあげてください。

また、大脳の錯覚は自分では自覚できないレベルで起こるのでベテランPTさんも初心に帰る気持ちで行ってみてください。

 

直線バイアス

腕や足などが直線上を動くような錯覚です。

とくに屈曲90度以上で起こりやすくなります。

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あたりまえですが、実際の人体は扇形を描くように動きますので、ROMを行う際にも扇状を意識する必要があります。

もしもうっかり直線上の動きをしてしまうと関節が離断する方向に力がかかるので怪我をする可能性があります。とくに臥位での股関節屈曲はセラピストが体重をかけて行うことが多いので注意が必要です。

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重心が斜め前方に移動する屈曲90度までと、重心が斜め後方に移動する屈曲90度以上では運動方向が逆になるので注意してください。屈曲90度周辺で一度手を持ち替えるとやりやすくなります。

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今回は一番基礎的な大脳の錯覚のご紹介でした。

この程度の錯覚であれば、プロのPTであればすでに理解している方も多いかもしれません。大脳の錯覚はこのほかにもさまざまなものがあり、中にはほとんどの臨床家や研究者が気づいていないようなものもありますのでご紹介していきたいと思います。

 

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大脳の錯覚を認識し、リハビリ手技を向上させる考え方

たとえば、同じROMを行っていても、なぜかすっと可動域を出せる理学療法士と、痛みをだしてしまい逆に悪くしてしまう理学療法士がいます。

ROMに限らず、同じ勉強会などに行ったのに、すぐに結果を出せるPTとそうでもないPTの違いは何なのか考えたことはありますか?

同じくらいの知識や技術のはずなのになぜか出る結果が違うというのは「センス」や「才能」というあいまいな言葉で片付けられてしまうことが多いですが、実は大脳の錯覚をどれだけ修正できているかという違いにすぎません。

 

リハビリの結果に直結する、大脳の錯覚とは?

平面バイアス

我々ヒトは大脳が発達しているため、逆に本能的な運動を理解するのが苦手になっています。たとえば、ヒトの運動や解剖を立体的に捉えることがリハビリの出発点ですが、多くの教科書では運動や解剖を平面的に表現しています。

 

これはMMT第7版に掲載されている肩甲骨の運動です。

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紙という平面で表現する以上しかたのないことなのですが、これではまるで肩甲骨が平面上を動いているような誤解を与えます。ですが実際の肩甲骨は鎖骨を中心に回旋するように動きます。

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そのため肩甲骨を外転する際に、肩甲骨は体の側面にきます。つまり純粋な肩甲骨外転という動きは存在せず

  • 肩甲骨外転+上方回旋 
  • 肩甲骨外転+下方回旋

という立体的な複合運動になります。

 

このことは「言われてみればあたりまえ」なのですが、立体的な複合運動は我々人類の大脳にとって理解が難しい分野です。そのため、あたかも「肩甲骨外転」というありえない動きが存在するかのように錯覚してしまいます。

この錯覚を自覚しないままROMを行うと、関節の運動範囲を超えた運動を行うことになるので、いくらリハビリを行っても治らない、結果がでないということにつながります。

 

このような錯覚はリハビリのそこかしこに存在し、治療の邪魔をしてきます。これらをいかに認識し排除するか?が理学療法の結果を左右すると言っても過言ではないほどです。

 

次回は最も基礎的な誤解であり、ROMの効果に直結する部分を書いていこうと思います。

 

 

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