持久性、高燃費、長寿命
全てに妥協しない生命のあたらしい形『ヒト』
寿命、昆虫の80倍
持久性、陸上生物のトップ
それでいてエネルギー効率は哺乳類なみ。
歩いたり、走ったり、あたりまえのように思えるけれど、ヒトの運動能力は実は地球最上位クラス。
爪も牙もないヒトがサバンナで生き延びてこれたのは、ウシやインパラを追い詰める持久力、貧しい食料でも動き続けることができるエネルギー効率、そして知性を支える高寿命のおかげ。
他のどの生物とも違う、身近にあるどんなモノにも似ていない、ヒトの身体固有の運動戦略を理解することがリハビリの第一歩。
可動と固定
矛盾する二つの条件をハイクオリティにクリアする「内骨格」
自由に動く。
なのに、100kgの荷重にも耐える。
こんな構造、みたことない。
自由にぐにゃぐにゃと動く軟体動物は、陸上で姿勢を保てない。
外側をがちがちに固めた昆虫は、自由に動けない。
自由に運動できるのに姿勢を維持できるのは、実はすごいことなのです。
では、どのように運動と固定を両立したのでしょうか。
ロボティクスモデルからの脱却
激しく動くのに、摩耗しない。だから高寿命。
身近にある蝶番、ネジ、ロボットなど、関節のような構造を持つものはほとんどすべて、圧迫固定モデルを採用しています。
これは簡単に強く固定することができる一方、動けば動くほど関節が削れ摩耗していき、短期間での部品交換が必要です。
そこでヒトは「固定しない」という全く新しいモデルを採用。
ヒトの関節には凸凹も、シャフトもありません。
ヒトには蝶番も球関節もなく、全て平面関節のみで構成されています。
しかも関節部には滑液により摩擦を極限まで軽減。
つるつると滑り、固定するものが何もない。
運動に極限まで特化したのがヒト関節です。
でも、これでは動くことはできても、固定はできないように見えます。
やわらかく固定する。弾力という革命
もしヒトが硬い靱帯を使ったり、筋を硬く収縮させたり、骨同士を押し付けたりする、圧迫固定を採用していたら。
靱帯は固定するには小さすぎ、強い力がかかると損傷します。
筋を同時収縮させると、関節を圧迫し摩耗変形します。
骨固定はいわずもがな、骨同士が削れ損傷します。
ロボットや昆虫の圧迫固定を想定した古典的運動学の仮説は、ヒトにはあてはめることができません。
ではヒトはどのように関節を固定しているのでしょうか?
ヒトの性能を飛躍的に伸ばした、スパイラル固定モデル
ヒトは「やわらかい物質でかたく固定する」という新発想で固定力と寿命を飛躍的に伸ばすことに成功しました。
筋をスパイラル形状にねじることで関節部位を引き締め、固定します。
スパイラル固定が圧倒的に優れている3つの理由
1弾性
ネジや外骨格の固定は強い外力があると致命的な損傷が起こります。
しかし、スパイラル固定では固定に軟部組織を使うため、たとえ外力に負けても一時的に変形して、もとに戻るだけ。
2抗重力
ヒト立位では常に垂直な力で関節が押しつぶされます。
しかしスパイラル固定は全方位から締め付けるため、重力に抗して関節の間に裂隙が生じ、関節の摩耗を防ぎます。
3動と静の切り替えはわずか0.3秒
一度ネジで固定してしまうと、関節の摩擦係数を変えることは困難です。
しかしスパイラル固定なら、ほんの数mm角度を変えるだけで固定力を無段階調整。
動かすときは極小の力で、固定の時は強い固定力を。その切替はわずか0.3秒。
どんな生物とも、どんなロボットとも違う、ヒトの特性を理解しましょう。
例題
ヒトのスクワット動作に使われる力は何でしょう?
古典的運動学でとらえると、こうなります。
固定されている関節を、屈筋の収縮により屈曲させるという発想です。ここに自重による回転モーメントを考慮する場合もあります。
股関節膝関節足関節の屈曲と伸展に関する筋をタイミングよく収縮or弛緩させる中枢コントロール、
収縮を支える筋力トレーニング、
変形を予防するアライメント調整…
様々な要求をクリアする難易度の高い動きとなり、必然的にリハビリも難易度が高く効果の薄いものとなります。
ヒトが内骨格システムを採用していることを踏まえると、スクワットはとてもシンプルです。
股関節膝関節の固定力は、大腿骨内旋によるスパイラル固定で生じています。
よってわずかに大腿骨外旋させるだけであとは重力で股関節膝関節が自然に屈曲してきます。
ここで随意的に行う動作は大腿骨外旋だけ。各筋の長さを変える必要すらありません。
よってスクワット動作のためのリハビリはたった一つ。大腿骨外旋コントロールを発現させることのみ。
目的がクリアになり、圧倒的な効果を出せるリハビリが行えます。
ヒトは関節摩擦が極端に低いため、もしも筋の同時収縮で圧迫固定を行うとしたら、全身の筋が常に過緊張している必要があります。少しでも力を抜いたら倒れてしまう、中枢も筋も常に発火したハイコストな状態。すぐに疲れ切ってしまいます。
スパイラル固定の発生条件は、筋が適性な弾力を維持している、この一点のみ。
筋が石灰化などの変形を起こさない限り、24時間常に固定力を発揮します。
中枢の介入も筋の随意的収縮も必要ありません。スパイラル構造は筋が筋である限り、関節を固定しつづけます。
運動の中の固定も、スパイラル固定で。
構造力学的固定は静止時のみではありません。
スパイラルをほんの少しだけ緩めれば、ゆっくりな動きに。たくさん緩めれば素早い動きに。
姿勢制御も、スパイラル固定でオート発動。
例えば足を上げたとき、転ばないように体幹を微調整する必要があります。
この微調整を中枢だけでコントロールしようとすると運動全ての調整パターンを暗記する膨大な容量が必要になります。よって昆虫は定型的な運動しかできず、バランスを崩されると立ち直ることができません。
スパイラル固定は中枢を一切介さず自動で発動する姿勢制御を実現
ヒトの体幹姿勢制御は中枢を介さず自動で発動。これがヒトの巧緻性を支える基幹システムです。
例題
スクワットしたときに転ばないようにバランスをとる体幹運動は何で発生しているでしょう
古典的運動学では、中枢が腹筋や背筋を随意収縮させることで発生するハイコスト運動しか考えません。
そのため体幹バランス低下の場合、腹筋や背筋の筋力不足改善するトレーニング、中枢が適切な指令を出せるような反復練習しかできることがありません。でも本当に筋力低下と中枢が問題なのでしょうか?
我々は外旋コントロール再生による筋出力改善療法により、筋トレも反復練習もなしに運動を改善することに成功しました。
随意収縮を起こさなくても、オートでバランス調整。
高度な中枢制御も、ハイコストな随意収縮も必要ありません※
中枢の反応が間に合わない急激な姿勢変化にも即座に対応。
※中枢コントロールによる予測的姿勢制御はサブシステムとして搭載されています。