進化から理学療法を考える 姿勢発達研究会のブログ

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拘縮リハで途方にくれないための、筋の起始停止から3Dで考える方法

新人セラピストさんであれば、患者さんの硬くなってしまった手足を見て途方にくれてしまった経験があるかもしれません。

「リハビリの国家資格所有者なのに、拘縮の治し方を知らない??」

と思う方もいるかもしれませんが、リハビリの学校では拘縮の原因や組織の変性については教えてくれますが、具体的な拘縮リハをしっかり教えてくれる場所は少なく、学生のうちに拘縮を治す経験を積ませてくれる学校は皆無です。随分改善されたとはいえ、リハビリのカリキュラムは知識偏重の傾向があるので、よりよいリハビリ目指して改善していきたいところですね。

 

というわけで、

拘縮って何?どうやって治せばいいの?

という疑問について理論だけでなく臨床で使える考え方と手技を書いていきます。

 

 

3D拘縮リハの適応と禁忌

これに関しては長くなってしまったので別にまとめました。

 

sinka-body.hatenablog.com

 

簡単にまとめると、3Dリハビリは軽い運動でも危険なほどの重篤な状態以外であれば疾患や障害部位を問わず使えます。

 

 

では、まずは筋の性質から解説してゆきます。

おさらい:筋の性質

筋肉は一定方向に規則正しく繊維が並んでいます。

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筋繊維の方向は筋の起始停止が規定します。

つまり、起始停止が近づくor遠ざかる方向の運動には強いのですが、それ以外の方向に動くようには想定されていないデザインです。

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  • 筋は起始停止が近づく方向に収縮する
  • 起始停止が遠ざかる方向の伸張は安全に行える
  • 一つの筋の中で起始停止が近づく運動(収縮)と遠ざかる運動(伸張)が同時に起こると筋繊維は破壊されやすい

このような筋生理学的現象を、実際のヒト運動学に適応したのが3D運動学です。

つまり、

  • もっとも安全な運動は、筋の起始停止が近づくor遠ざかる方向の運動である
  • 拘縮や変形、痛みの原因は、筋の起始停止方向に動いていないことである

という考え方です。

 

起始停止の3D構造から考える正しい関節ROM訓練

具体例として、大殿筋を考えてみましょう。

大殿筋は伸筋、だが場合によっては屈筋、歩行時には主に遠心性に作用するなど、なんのためにあるのか捉えにくい筋の代表例です。ですが、『筋の求心性作用は、起始部と停止部を近づける作用をするために存在する』と考えてみるとシンプルに理解できます。

【大殿筋の起始・停止】

(起始)

後殿筋線の後方、仙骨・尾骨の外側縁、胸腰筋膜、仙結節靭帯らに付着。

(停止)

浅層は、大腿筋膜の外側部で腸脛靭帯に移る。

深層は、大腿骨の臀部粗面に付着。

http://www.musculature.biz/40/44/post_168/

大殿筋は大腿後方の筋ではない 

後面からみた大殿筋です。今回は単純化のため、大殿筋長頭のみを考察しています。

ほとんどの教科書にはこのような後面からみた図が載っているため、大殿筋は大腿後方の筋であるという誤解をしている方がよくいます。

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ですが、大殿筋のは大腿筋膜張筋につながり、脛骨外側前面に付着します。

つまり、ヒトにおける大殿筋は90度ねじれた形になっています。

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このような筋の起始停止がもっとも近づく肢位、つまり大殿筋が最も収縮する肢位は

股関節屈曲90度、外転90度、外旋90度

です。

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逆に最も伸張する肢位は

 

股関節伸展10度、内旋90度、外転10度と考えられます。

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この肢位の算出方法としては、xyzそれぞれの平面で以下の証明を利用しました。

(簡単な証明ですが、臨床にはあまり関係ないので、興味のある方だけ読んでください)

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つまり、大殿筋の正しい作用は

股関節屈曲90度、外転90度、外旋90度の肢位から、股関節伸展10度、内旋90度、外転10度の肢位までxyz全ての座標において等分に移動することです。

 

画像をクリックすると動画ははじまります。

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つまり、大殿筋の筋力低下、筋短縮、アライメント異常においてはこのような↑運動を徒手で行うことが治療になります。

 

また、今回は大殿筋のみ解析しましたがハムストリングスや四頭筋など全ての筋で上記と同様の『屈曲外転外旋』と『伸展外旋内旋』パターンとなります。

そしてさらに、上記の運動の関節部を拡大してみると、骨が脱臼しない正しい3D骨運動となっていることがわかります。

 

 

 

 クリックすると動画がはじまります。

上記大殿筋運動と全く同様の運動の股関節部分拡大図です。

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 つまり、今回の手技は大殿筋の治療のみに焦点をあてたにも関わらず、他の筋や骨にとっても効果の高いリハビリが行えます。また、この運動は神経や靭帯なども過度な負荷がかからない安全な運動です。これは生物においては全ての形状は合理的に決定されるというwolfの法則で説明できます。

これが3Dリハビリが『疾患を問わず効果が見込める』理由です。

 

つまり、

ROMエクササイズ=筋トレ=中枢麻痺改善=末梢神経回復=アライメント修正

と、一つの運動で様々な効果を出すことができます。体は全て繋がっているのだから、あたりまえといえばあたりまえな理論です。

 

これまでのリハビリでは(というか医学では)筋は筋、骨は骨、神経は神経、と全く別のものとして研究を深めてきました。それはとても意義深いものですが、今後はAIなどで大量のデータを扱うことができるようになったため個別の組織についての研究を俯瞰し、全体像を掴む方向性の研究が進んでゆくだろうと考えています。

 まとめ

 股関節の拘縮の治し方

  • 筋の起始停止を3D的に捉え、3D運動を行う

 

理論は難しいですが、やることはとてもシンプルです。

正しく行えば、最短時間で最大の効果が見込めます。何十年も治らなかった方など改善しにくい方などにも使ってみてください。

立体構造を把握するのはなれないと難しいかもしれないので、骨標本等でしっかり確認しながら試してみてください。

 

 

 

 

股関節【屈曲】ROM、やってしまっていませんか?安易な屈曲は危険です。

今回は歩行と股関節についての3D分析です。

歩行時に股関節だけでなく骨盤運動が起こるため、骨盤や体幹リハビリが重要、ということは教科書にもよく書いてあります。ですが、骨盤運動がどのように下肢に影響を及ぼしているかまで踏み込んでいる教科書は、ほぼ皆無です。

 

今回の記事は、画像をクリックすると動画がはじまります。

 

教科書に載っている数値をもとに、骨盤と股関節運動を行った歩行運動のシュミレーションがこちらです。

画像クリックで動画がはじまります。

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ごく一般的な歩行に見えます。 

下肢はほぼまっすぐに屈伸しているように見えます。(今回は骨盤と股関節のみを動かしているため、足部が外反しているようにみえていますが気にしないでください)

 

歩行時に股関節が屈伸しているという大誤解

ということは、股関節もまっすぐ屈伸している…?と思ってしまいがちですが、これは大きな間違いです。歩行や階段昇降ができないからといって股関節のROMを行うと効果がないばかりか麻痺や変形を悪化させてしまいます。

 

 骨盤の影響を取り沿いた純粋な股関節運動シュミレーション

画像をクリックすると動画がはじまります

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右側が股関節のみ抽出した運動、左側が教科書通りの骨盤の動きをした歩行です。

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画像クリックで動画がはじまります。

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画像クリックで動画がはじまります。

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 このように、一見まっすぐに見える下肢の運動は一つ一つの関節に注目するとまっすぐではないのが正常歩行です。

 

股関節リハビリは何をすればいい?

 

 股関節に関しては

  • 屈曲+外転+外旋
  • 伸展+外転+内旋

という複合運動が起こるのが正常です。教科書に載っているROM的な動きは本来の股関節運動ではなく、骨や靭帯が傷む危険な運動です。股関節屈伸をはじめとする教科書的なROMは臨床で最もやってはいけない危険な動作です。

もし本当に教科書的な『股関節屈曲』が起こるとすると、骨がめり込みます。大怪我ですね(汗)

 

画像クリックで動画がはじまります。

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股関節や腰部の痛み・可動域制限・筋力低下・歩行困難などのリハビリでは

  1. 股関節の自然な複合運動を出す
  2. 股関節をフォローする骨盤運動を出す

というステップで行う必要があります。

股関節が正常な位置にきていない状態で、持続的伸張や筋トレ、ROMエクササイズ、自動運動などを行うのは効果が無いだけでなく怪我や悪化の危険があります。まずは各関節の3D複合運動を理解し、しっかり評価できるようになるのがリハビリの第一歩です。

 

6月の講習会では、筋の走行を3Dで捉えなおし、3D複合運動を行うことで股関節と歩行に対するアプローチを行います。

 

 

7月の肩関節はそろそろ定員いっぱいなのですが、なぜか6月の歩行の参加者は少ないので、少人数でじっくり学べるチャンスです。

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180度開脚を可能にする、シルヴィ・ギエムの体幹の秘密

ポリゴンの骨モデルでのシュミレーションを行うことで様々なトップアスリートの身体の秘密に迫るシリーズ、『100年に一度の天才バレリーナ』シルヴィ・ギエムの二回目です。

 

 一回目はこちら。

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 前回の考察では、『股関節のみでは180度開脚は不可能』ということが分かりました。股関節は思った以上に可動域の狭い関節なので、見かけ上の股関節の可動域の大半は体幹の代償動作で起こっています。

そのこと関してはバレエやダンスなどをやっている方であればご存知の方も多いかもしれません。ですがあまり体のことを知らない方だと無茶な柔軟体操で股関節を傷めてしまうことが多いので注意が必要です。

 

180度開脚するシックスオクロックのポーズは股関節の運動だけでは不可能です。では、どうすれば180度開脚が可能になるでしょうか。

 

一口に180度開脚と言っても、まっすぐに開脚するのと横向きに開脚するのでは実は真逆の動きをしていたりと複雑なのですが、共通するのは体幹をしっかり動かす必要があるということです。

体幹の側屈

ギエムの体幹は一見まっすぐに見えますが、実はとても大きく側屈しています。

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体幹が横に曲がっているのですが、上下のバランスが良いので全体的にはまっすぐなように見えます。これを可能にするのが胸椎の回旋です。普通の人の胸椎はとても硬く、ほとんど動きません。ギエムは胸椎の回旋ができているため普通より大きく体幹が動きます。(胸椎の『回旋』ではなくて『側屈』ではないか?と思われるかもしれません。あまり知られていないことですが、胸椎は肋骨との関係上、ほとんど側屈しません。それは後日解説したいと思います。)

 

骨盤の後傾

また、ギエムの骨盤は後傾しています。バレエでは一般に骨盤を強く前傾させることで足を高く持ち上げますが、シックスオクロックでは真逆の戦略を採用しています。

ギエムは骨盤の後傾によって体幹の矢状面(前後)のまっすぐさを演出しています。おそらく、シックスオクロックのポーズは横から見たときにも体幹がまっすぐに見えるはずです。

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バレエでは股関節外旋と骨盤前傾を多用します。シックスオクロックは伝統的なバレエの姿勢に骨盤後傾という要素を取り入れたということができるかもしれません。

 

また、骨盤の後傾をすると下肢が持ち上がりますので、股関節の負担が少なくなります。これもギエムの29年間の現役を支え続けた秘密の一つでしょう。

 

 

一見まっすぐのように見えるギエムの体幹は実はかなり大きく側屈しているということが分かりました。次回はこの体幹側屈によって脚はどのような影響を受けているのかを考えていきたいと思います。

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人類を越えた身体の謎に迫る 100年に一度の天才、シルヴィ・ギエム編

3DCGを使ったシュミレーションで様々な分野の達人たちの身体の秘密に迫るシリーズ第一弾は100年に一度の天才バレリーナであるシルヴィ・ギエム編です。

 

シルヴィ・ギエムってどんな人?

シルヴィ・ギエム(Sylvie Guillem, 1965年2月25日 - )は、フランス・パリ生まれのバレエダンサー。 100年に1人の逸材とまで称される現代バレエの女王。

wikipedia

 バレエの常識を変えた、と言われるほどの高い身体能力を持ち、早期引退が多いバレリーナの中で29年間トップに君臨し続けた方です。

ギエム シックスオクロックの謎

シルヴィ・ギエムは100年に一度の天才と呼ばれ、バレエの常識を塗り替えたと言われる様々なパフォーマンスを生み出ました。

ちょうど時計の針が6時を指すように、180度開脚するシルヴィ・ギエムのシックスオクロック。シルヴィ以前とシルヴィ以降でバレエの常識が変わってしまうほど画期的だったそうです。足がまっすぐ真上に上がるなんて、素人目に見てもものすごいインパクトですね。

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 一体彼女の骨格はどうなっているのでしょう。何か他の人と全く違う、特別な骨の形をしているのでしょうか?

 

今回はギエムの股関節についていろいろと考えていきたいと思います。

 

股関節だけでは180度開脚はできない

まず、もしも股関節だけでこのポーズをしたらどうなるかをシュミレーションしてみます。

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大腿骨が骨盤にめりこんでしまっています。こんなことは骨盤骨折でもしないと不可能ですね。股関節は自由度の高い関節だと思われていますが、荷重により大きな負荷が常にかかる上に、実はとても自由度の低い関節なので変な動きをするとすぐに痛めてしまいます。ですから、よくある股関節のストレッチは非常に危険です。

 

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今回のまとめ

股関節だけでは180度開脚は不可能

 

次回は、どのようにすればシックスオクロックのような真上に足を上げるポーズができるのかを考えていきます。

 

 

 

 

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OHや股関節の痛みと骨盤の関係

股関節や膝など、下肢のリハビリを行う場合には必ず骨盤や体幹の評価を行う必要があります。

ですが、体幹の治療に苦手意識を持っているセラピストも多いのではないでしょうか?

 

難しいイメージのある体幹リハビリですが、相対的運動という考え方をすればとてもシンプルです。

 

まず基本として、手足と体幹はつながっています。つまり、体幹だけが動くということはありえません。あまりにあたりまえすぎて普段意識しない部分ですが、これが実はとても大切な考え方になります。

 

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つまり、普段我々が当たり前のように行っている骨盤の傾斜などの動きも、ありえない動きということになります。

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もしも純粋な骨盤傾斜を行うと、このような動きになります。

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かなり無理のある体勢ですね。

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一般的な骨盤の傾斜を行うためには、股関節の内外転が必須になります。

一見動いていないように見える股関節ですが、実はかなり大きく動いているからこそ見かけ上動いていないように見える状態を作り出すことができています。

このような現象は全身で常に起きていて、一見動いていない状態を作り出すためには全ての関節の可動性が必要になります。

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このような考え方をすると、骨盤の位置が下肢に大きな影響を及ぼしていることがよく分かります。

膝の変形や股関節の変形、歩容など下肢のリハビリを行うときには骨盤のアライメント評価も行い、見かけ上動いていない関節が実際にはどのように動いているかを評価していくことが大切です。

 

 

膝の立体構造を考えるセミナー開催しました

埼玉で開催した膝拘縮のセミナー無事終了しました。参加された皆さんありがとうございました。

今回のテーマは膝の拘縮と痛みをメインに、膝の3D構造から考える正しい膝のROMと筋力増強、O脚や膝折れなど様々な疾患へのリハビリ法でした。

膝の疾患、といってもやはり全身が関わってきますので膝だけでなく股関節や体幹の話もありました。

 

膝をテーマにしたセミナーは今回が初めてだったのですが、参加されるセラピストのほとんどは膝の痛みや可動域制限などは無いため実技がやりにくいという意外な欠点がありました。このあたりは肩や股関節と違うところですね。次回は膝の痛みなどある方の参加があるといいのですが…

 

また、今回前半は理論編、後半は実技編ということで実技に関しては感性というか、ひたすら反復練習するという根性論的な部分がどうしてもあります。次回5月の股関節編に関しては筋の起始停止という客観的な指標を導入し、できるかぎり分かりやすく習得しやすいようにしていきたいです。

セラピスト自身のセルフケアやボディワークも体系化していきたいですね。

 

基本的に私の講習会はできるかぎり理論的に、客観的に、きちんと学ぶことで感性やセンスを問われない技術を身につけることを目的としていますが、複雑な部分や手技の部分のマニュアル化はなかなか難しいものです。私自身が「考えるな感じるんだ」系の人間なのでなおさらそう思ってしまうのかもしれません(汗

 

 

ご参加ありがとうございました。

 

 

次回は5月に股関節をテーマとした講習会を予定しています。

こちらは旧下肢編のリニューアル版ですが、筋と靭帯を指標とすることで手技がとてもわかりやすくなりました。

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治ったはずなのに治っていない?股関節リハビリの効果が出ない理由

股関節のリハビリは何故か効果が出にくいことがあります。

  • 臥位や座位では改善しているのに、肝心の立位や歩行に反映されない
  • 可動域は改善したのに、痛みが悪化した
  • 画像所見と実際の病態が一致しない

など、「治ったはずなのに、治っていない」という不思議なことが時々起こります。これは肩や体幹ではあまり起こらないのですが、下肢、とくに股関節でよくある現象です。

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股関節は荷重が大前提

股関節は歩行や立位など、体重を支える必要があることが上肢や体幹との大きな違いです。免荷状態ではさほど問題にならない肢位でも荷重すると負担が大きく痛みや変形の原因になることがあります。これが「免荷状態では改善しているのに、荷重すると悪化する」という現象の原因です。

股関節の自由度は高い?低い??

バレエをはじめとするスポーツ医学でも最近は「股関節の自由度の大半は体幹の代償動作」ということが知られてきています。股関節は本来、自由度が非常に低い関節です。

ですが、実際には無理なストレッチを行うことで不自然な股関節の可動性を出すことができてしまいます。

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ですが、この肢位は靭帯や筋を無理に歪ませます。限界まで引き伸ばされた靭帯に荷重すれば靭帯が傷み、骨が削れてきてしまいます。これが変形性股関節症を初めとする股関節疾患の原因です。

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私は「股関節は人体で一番自由度の低い関節」と言っています。ですがもう少し正確に言うと「股関節は自由度が高い、しかし安全に荷重するためには自由度を可能な限り低くする必要がある」ということになります。

 

股関節の自由度を出すストレッチは危険です

免荷状態で負荷をかければ靭帯が引き伸ばされ、股関節の可動性が上がります。

ですが、股関節は歩行と立位のための関節であり、臥位や座位でどれだけ動いても意味はありません。むしろ臥位や座位で無理に動かすことで軟部組織を不自然に伸張し怪我の原因になります。

特に股関節に関しては、正しい運動方向をきちんと理解して動かすことが重要になります。

 

また大腿骨は細長い形状をしているため大きな負荷をかけやすく、自分では気づかないうちにかなり無理な負荷をかけてしまうことがよくあります。整体院に来る方のなかにも、無理な股関節ストレッチが原因で股関節が痛くなることが結構多いようです。セラピストによる他動運動も、骨の3D運動をきちんと理解して慎重に行ってください。

 

 

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 股関節講習は随時開催予定です。

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