進化から理学療法を考える 姿勢発達研究会のブログ

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肩関節の可動域訓練法として、肩甲骨を内転させるのは逆効果

一般的には未だに、いわゆる「胸をはるよい姿勢」の動き、肩甲骨の内転運動だけを行うことが肩関節の可動性を上げると思われていますが、これは大きな誤解です。

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肩甲骨を内転してはいけない理由

肩甲骨と鎖骨の基本

 

肩関節は鎖骨と肩甲骨で成り立っています。

鎖骨と肩甲骨の角度は約55度で固定されています。ここは肩鎖関節と呼ばれていはいますが回旋運動以外はほとんど可動せず癒着しています。

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つまり、肩甲骨+鎖骨というユニットは「く」の字形をしています。

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さて、このような「く」の字形の肩甲骨+鎖骨ユニットは、肩甲骨内転によってとんでもないことになってしまいます。

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肋骨に鎖骨がめり込んでしまいます。もし本当にこうなったら大事故ですね。

みているだけで痛そうです。

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正常な肩甲骨の位置は、『ねこぜ』の姿勢

肩甲骨は 外転+前方突出 が正常です。

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いわゆる「胸を張った正しいよい姿勢」は凍結肩などの痛みや可動域制限を起こし野球肩などの怪我の原因になるだけでなく、呼吸パフォーマンスまで悪化する、完全に間違った姿勢です。

一見円背などを引き起こす悪い姿勢に見える肢位のほうが正しい、というのは戸惑うかもしれませんが、その理由は肩周辺の筋の付着を考えると分かってきますので今後解説していきたいと思います。特に小胸筋と前鋸筋がポイントです。

 

 

肩関節の関連記事

 

 鎖骨の可動域を考える大切さについて

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 肩関上腕関節は自由度が低いということに関して

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 肩の痛みや可動域改善の基本

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S字?反り腰?いやいや、平背がいい??進化から考える脊柱のS字カーブの『正解』

正しい立位を理解することはリハビリの基本といえます。姿勢矯正だけでなく呼吸理学療法や歩行にも大きく関係する部分です。

 

↓どの姿勢が『正しい立位』でしょう?

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おそらく、体に関する知識が豊富なはずの理学療法士でも、上記三つのうちのどの姿勢が正しいのか明確に根拠を持って答えることができないのには理由があります。

 

もくじ

 

「クッション性」は間違い!脊柱のS字カーブが必要な本当の理由

 

ヒトの脊柱のS字カーブの理由としてよく挙げられるのが、脊柱にかかる衝撃を分散させるクッションの役目、というものです。ですが私の知る限り、具体的にどの程度の湾曲がどのような衝撃をどれくらい分散させているかの計算をした研究はみあたりません。(そのような研究をご存知の方がいらっしゃったら教えてください)

私も計算してみたことがあるのですが、どのような計算をしてもS字カーブは必要なくむしろS字にすることで弱い構造になっているという結果になってしまいました。(予断ですが、静的なS字カーブは弱い構造ですが、S字カーブをとることができる可動性があることは衝撃に強い構造です。「S字カーブは衝撃に強い」というのはおそらく可動性と静的な姿勢を混同した発言であると考えられます。)

脊柱的には『平背』が有利

 

重力に攻するのであれば↓このような単純にまっすぐな構造のほうが有利です。曲がっているものに力を加えると、さらに曲がる方向に力がかかってしまうからです。

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ですので脊柱だけ考えた場合、直立不動の姿勢をとる場合はできるだけS字カーブを無くしたいわゆる『平背』の姿勢が有利になります。

 

本題:なぜS字カーブが存在するのか

 

やっと本題です。

抗重力という視点から考えた場合は単純にまっすぐな脊柱のほうが有利ですが、平背には二つの欠点があります。

欠点1:立位は呼吸に不利な姿勢

食物という形のしっかりしたものが詰まっている胃や腸に比べ、肺には空気という形の無いものが入るので、重みに弱い構造です。重力がかかると簡単に潰れてしまい呼吸ができなくなります。そのため肋骨で形をしっかり固定する構造になっています。

ですが、四足動物の時代には重力と肋骨の方向が一致していたのに対し、ヒトの場合は重力と肋骨が垂直に交差してしまい、重力の影響を強く受ける構造です。

 

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ヒトの肺は重力に負けてつぶされてしまい簡単に呼吸困難になってしまいます。

常に上から押さえつけられている肋骨を持ち上げやすくするめには、肋骨の根元である胸椎から動かす必要があります。*1

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そして、胸椎を伸展させることにより移動した重心を戻すために骨盤と首が屈曲します。これがS字カーブの理由です。

正しいS字カーブとは

このことにより、

  • 基本的には脊柱はまっすぐ(平背)
  • かつ、胸椎が軽度伸展

という立位における『正しい』S字が導き出されます。

冒頭の図↓では、真ん中の姿勢が正しい姿勢です

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胸椎を伸展させるということだけを考えると図の左端の脊柱が過剰に伸展している姿勢も一見正しそうに見えますが、平背の二つ目の欠点である消化器と重力の関係について考えた場合、真ん中の姿勢が正しいという結論になりますが、長くなりましたのでそのあたりはまた書いていきたいと思います。

 

 

 

次回の講習会は11月と12月、テーマは歩行です。

申し込みは講習会のお知らせからどうぞ。

臨床ですぐ使えるテクニックを中心に講習会を開催してきましたが、今後はs字カーブや進化など、手技をより効果的に行うための応用的な講習会も開催していきたいと考えています。また、基本の触診を納得いくまで繰り返せる形式の講座も開催したいです。

ブログのほうもより具体的な手技や今回のような進化の話など、様々な方面で現役PTさんにとって使える記事を増やしたいと考えています

 

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*1:より中枢から動かすほうが能率がよい、という運動学の基礎法則についてはこちらの記事を参考にしてください。 

sinka-body.hatenablog.com

 

むやみに関節の自由度を上げる関節モビライゼーションの危険性

リハビリでは可動域の改善を目的として、モビライゼーション(モビリゼーション)やマニュピレーションといった手技を行う場合も多いと思います。

 

関節モビライゼーションや関節マニュピレーションなどを学ぶとき、正確な触診や関節内運動の理解、関節の状態の評価、必要な振幅などの「どうやって触るか」に注目することが多いですが、「なぜ触るか」「そもそもどういう動きが正しいか」を考えずにむやみに可動の増大を行うと関節の破壊につながりますので注意が必要です。

実際、長くリハビリに通っている患者さんの関節が過剰にゆるくなり姿勢維持に多大な筋力が必要になってしまっているケースがときどき見られます。

関節の「遊び」と「可動域」の違い

 

関節は基本的には、レールの上を走る電車のように一種類の動きしかしません。これが関節の「可動域」です。

 参考過去記事

sinka-body.hatenablog.com

 

ですが完全にレールの上しか動かせないのであればほんの少しの外力が加わるだけで脱臼や骨折をしてしまいます。そもため、ある程度はレールを外れても問題ないような構造になっています。

ですので、関節の遊びの部分というのは「これ以上レールを外れると怪我をする」という黄色信号です。遊びの部分があるからレールを外れて異常な動きをしても大丈夫、ではなくて、レールを外れると大怪我するから遊びの部分がある、つまり、できればレールを1mmも外れてほしくないというのが骨格の本音です。

この「可動域」と「遊び」の部分を混同してしまい、可動域を改善するつもりで異常な遊びを引き出してしまうとおおきな怪我に繋がります。

 

関節モビライゼーションのやりすぎに注意

 

関節モビライゼーションは、怖いくらい効果の高い手技です。

どんなに拘縮があっても廃用があっても、上手な人が時間をかけてモビライゼーションを行えば関節はある程度動くようになり一見「治った」ように見えてしまいます。

 

ですが、むやみに靭帯や関節包などの組織をひきのばしてしまうことで関節がゆるくなると骨支持力が低下し姿勢維持に無駄な筋力が必要になります。また、自由度が高くなってしまうことで何が正しい動きか分からなくなり可動域を外れた異常な動きをしてしまい怪我につながります。体の柔らかいバレリーナほど無茶な動きをして怪我をするというのが代表的な例です。身近な例としては、足ツボをやりすぎると偏平足や外反母趾になります。

危険な例としては、肩に非常に負荷のかかる生活をしている脊髄損傷患者の肩関節をモビライゼーションしていまったことで靭帯損傷や脱臼を招くケースなどがあります。この場合は患者様の今後の人生におけるQOLの大損失に繋がってしまいます。

 

安全な関節モビライゼーションのために

遊びの部分はかなり少ないことを理解する。

他動で関節内運動を促すと、かなりの遊びの部分をつくることが可能です。ですが、正常な関節では本来、遊びの部分は大きくても数ミリ、少ないと1ミリの10分の1程度です。モビライゼーションではとにかく振幅を小さく、が鉄則です。

 

 

関節がどのように動くか、を理解する

自由度が高いと言われることのある肩関節や股関節も含め、全ての関節は基本的には自由度ゼロです。レールの上を走る電車のように、一種類の動きしかしない、という内骨格生物の基本をまず理解してください。

↓なんども登場させている動画で少々くどいですが、たとえば股関節はこのような円を書くような動きしかできません。

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自由度ではなく、可動域を変える

一つ一つの関節の特性と正常な運動方向を立体的に理解し、むやみに自由度を上げるのではなく正常な運動を促すという考え方をしてほしいと思います。

 

具体的にどうすればいいか

1 一つ一つの関節の正常な動きを理解する

 

関節の立体的な運動については、いまだに平面でしか人体を考えていない旧態依然の教科書には載っていないため戸惑うかもしれませんが、一つ一つといっても類型化すれば3種類だけなのでさほど難しくはありません。

2 正常な動きを日常の動作にどのように応用しているか?を評価できるようになる

 

これは動作分析の分野になります。

動作分析が苦手という理学療法士が多い理由の一つとして、動作分析の手法が確立されていないということがあります。いろいろな考え方がありどれが適切が分からなくなってしまうのです。ですが、正常な関節運動という観点から動作分析を行えばどのようなケースでも首尾一貫した見落としのない分析が行えますので非常にシンプルになります。たとえば、歩行であれば全部で6つのポイントを評価すればどんな方の歩行も把握できます。

3 関節に無理の無い動作を促す

ステップ1と2でしっかりした評価ができてしまえば治療は単純に「無理の無い合理的な動きを促通する」というそれだけになります。

 

まとめ

 

今回は全体的な理学療法の評価と治療の考え方という大きなテーマになってしまいました。この記事だけでは抽象的すぎて分かりにくいかもしれませんが、講習会では具体的な評価方法と治療について行っていますので分かりやすいと思います。

ブログのほうでも今後より臨床で遣いやすい具体的な手技を書いていきたいと思います。

 

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体幹の運動の重要性とKT(Kinetic─Chain)の考え方

運動連鎖、キネティックチェーン(KT)を意識した理学療法、などというとなにやらハードルが高そうですが、基本の考え方はとてもシンプルです。

キネティックチェーンの基本

 

キネティックチェーン(KT)とは、ある部分の動きがほかの部分にも影響する、というそれだけのことです。体はつながっているのだからあたりまえといえばあたりまえですね。

キネティックチェーンの実際

それでは、一部分の運動が全身にどれくらい影響を与えているかを考えます。

まず、骨盤の傾斜の動きを考えます。以下の動きを実際にやってみてください。

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立位で腰を左右に傾斜させるだけの非常に地味な動きです。普通の人ならば何の苦労も無く出来てしまうと思います。

では、この動き、股関節はどう動いているでしょう?

 

屈曲?伸展?外転??

おそらく、ほとんどの理学療法士さんは「股関節は動いていない」と答えるのではないでしょうか?詳細に考えても、せいぜい軽度屈曲程度に感じられます。

 

でも、よーく考えてみると、骨盤が動いているのに股関節が動かないと、こんな動きになってしまいます。

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空中浮揚しています。ありえないですね。

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これができたら逆にすごいです。

 

 

つまり、骨盤だけが動いているように見える運動というのは実際は股関節が動かないと成立しません。

骨盤だけが動いているように見える=股関節がものすごく動いている

 ということになります。

骨盤の傾斜は 何気ない動きに見えますが、実際は全身の可動域があってこそ可能な動きです。

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そしてこのブログでも何度も書いていますが、骨盤が動かないと歩行はできません。

  

 

sinka-body.hatenablog.com

 

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歩行評価で考えるべきたった一つのこと

歩行は骨盤と股関節と体幹全体全てを考えなくてはいけない、と思うと非常に複雑になってしまいますが、これは逆に考えると

骨盤さえ動いていれば、他は勝手にいい具合になる

 

ということになります。

つまり、ごく単純にまとめてしまえば、骨盤の動きを促通さえすれば股関節も膝も足も考えなくても自動的に調整されてしまいます。

また、一見複雑な歩行分析と治療ですが、「骨盤がどう動いているか?」という観点から評価すれば前後左右の合計4つのパターンに分類することができ非常にコンパクトにまとまります。

 

 

今後は、気軽に参加できるナイトセミナーや意見交換&復習ができる症例検討会などのアフターフォローにも力を入れていきたいと考えています。

また、遠方からお申し込みの方も増えてきたので、今度はアクセスのいい東京都内で開催を検討中です。

 

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歩行分析における、体幹・脊柱の考え方 関節学編

 今回は長くなったので目次をつくってみました。

「おさらい」部分を知っている人は「本題 平面関節の特性について」から読んでください。

 

おさらい 球・臼関節の特性について

 

股関節は臼関節ですので以下のような動きをします。

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これは、可動域は広いが自由度が低く、脱臼やインピジメントが起こりやすいという欠点のある形状です。また、動かすときに大きな筋力が必要です。

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参考過去記事

 

sinka-body.hatenablog.com

 

本題 平面関節の特性について

ご存知、脊柱を構成する平面関節は軸にそってくるくると回旋します。

教科書的には、体幹は屈伸や側屈すると書かれていますがもし本当に脊椎がこんな↓動きをしたら脊髄損傷になります。

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脊椎は回旋しかしません。

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でも体幹は屈伸や側屈しますよね。その理由を解説します。

脊柱の屈伸や側屈の特性

脊柱の屈伸や側屈は、股関節や肩関節などの屈伸や内外転とは全く違う理屈で起こります。

 

 

 ↓脊柱は関節面が図のように斜めになっています。

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この形状で単純な軸回旋をすると関節面が歪んでしまうので、斜め方向に軸がずれながらの回旋をするようになります。↓

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 この『軸がずれながらの回旋』も、↑上図のように脊柱一つ一つの関係を拡大してみると、普通の回旋とさほど変わらない地味な動きに見えますが…

 

脊柱は小さい骨の集まりですので、全体図を模式化すると下のようになります。

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この状態で『軸がずれながらの回旋』をしてみると…

 

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脊柱の回旋という地味な動きをしているだけなのに、体幹全体をみると外転や屈曲という派手な動きをしているように見えます。

 関節面が水平なフラットな平面関節だと、回旋してもただくるくると回るだけになります。

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脊椎が回旋で屈伸や側屈を行うメリット

回旋は関節面のずれがすくなく関節に負担がかからない

 →損傷のリスクが少ない

回旋はてこの柄が短い

 →少ない筋力で大きな出力が可能。

 

さらに、 以下の記事で解説したようにできるだけ遠位の関節を動かしたほうが運動に有利になります。

nka-body.hatenablog.com

 歩行をするなら股関節で屈曲伸展を行うより頚椎や胸椎で屈曲伸展させたほうが約2倍も能率的です。

 また、そもそも自由度の低い股関節のみで歩行を行おうとするとこんな↓意味不明の歩行になってしまいます。

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 なぜ体幹を動かさずに股関節膝関節のみで歩行しようとすると↑のような歩容になってしまうかの記事はこちら↓

sinka-body.hatenablog.com

 

終わりに

 

今回は、理学療法のメインとなる歩行の評価治療において体幹と脊柱の動作を評価することがいかに大切かを主に関節運動学の視点から解説しました。

リハビリにおいて体幹と脊柱の運動がどれだけ重要か、はいくら解説してもしきれないくらい深い部分なのでまた視点を変えた解説もしていきたいと思います。

 

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歩行に関する過去記事

 

sinka-body.hatenablog.com

 

 

sinka-body.hatenablog.com

 

 

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歩行における体幹の重要性と、体幹の評価法を考える

体幹の評価が苦手、正直体幹の役割がよく分からない、というPTさんのために、いかに体幹が重要か解説してみました。

 

体幹が動かなければ股関節も膝も動かない

 理由はいろいろと説明できるのですが、まずは単純明快な図形的な説明をしてみます。

たとえば160センチの人なら、股関節、骨盤、鎖骨までの長さがだいたい以下の図のくらいになります。

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 それぞれの関節が30度動いたとき、レバーアームの長さの半分が移動距離になります。これは中学校の数学でやった三角関数の問題です。なつかしいですね。

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股関節を30度外転すると足底は40センチ外転することになります。

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これが腰椎5番を30度外転させると、レバーアームが20センチ長くなるので足底も+10センチ多く動かすことができます。

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今度は胸椎1番から外転させてみました。

足底は+25センチ多く動かすことができます。

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つまり、レバーアームが長いほど有利な運動ができる、という単純な理屈です。

胸椎自体はほんの数ミリしか動かないのでBICONなどの測定では誤差とされてしまいますが、胸椎のたった1ミリの動きが足底では1m近い運動になるので、体幹の動きは本来は最も重要視されるべきです。

 

さらにこれだけではなく、股関節の直線的な運動に比べ、脊柱は軸をずらした回旋という動きを使うため、非常に少ない力で強力な出力が可能です。

関節の形状と運動の関係はこちらの記事で解説しました。

 

 

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歩行分析は「骨盤」だけ考えればOK

 

ですので、ものすごく単純に言ってしまえば歩行の評価と治療は骨盤だけを考えておけば結果的に全体を評価・治療することができます。歩行評価が苦手な理学療法士さんはまずは骨盤と歩行について勉強するといいですよ。

 

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参考記事

 

sinka-body.hatenablog.com

 

 

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歩行分析における片足立位の重要性を、進化学から考える

歩行分析で最も注目するべき相

 

例えば、この画像のような姿勢の場合、歩行分析で最も注目するべき部位はどこでしょう?体幹?右股関節?左股関節?それとも膝や足部でしょうか?

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この中で一番重要なのは立脚側、というのはなんとなくイメージがつくかと思います。

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例えば右麻痺などで右下肢の動きが悪い場合には、右足ではなく左足の踏み出しができなくなる、というのはよくあることです。

片足立位ができさえすれば、後は反対側の足を前に振り出すだけで一応は歩行が可能ですので、片足立位の姿勢が大事、というのは分かると思います。

 

平行棒内のバランス訓練の効果がイマイチな理由

 

歩行には片足立位が大事、ということで、片足立位のバランス向上のために平行棒内で足を上げる練習をするのはリハ室ではよく見られる光景です。

平行棒内のバランス訓練はバランス向上や筋力強化には役立ちますが、それ以外の原因で片足立位ができず踏み出しができない場合には効果がいまいち、ということもあります。

その場合、片足立位がとれない、バランスが悪い原因をより深く考える必要があります。

 

片足立位姿勢は、思ったよりハイレベル

 

しかし、ではどのように片足立位が成り立っているかは案外盲点かもしれません。

 

片足立位の姿勢というのは、こんなイメージではないでしょうか?

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 ↑この画像のように、右下肢が外転や屈曲していますが、支持脚である左下肢は動いていない、というイメージではありませんか?

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↑こんなイメージです。ロボットや人形ならばこんな風に動くかもしれません。

ですが、片方の下肢のみが動くと重心がずれるので転倒してしまいます。

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 フィギアやマネキンは片足では立てません。

片足立位を維持するためには、重心を股関節と足底に一致させる必要があります。

 

片足立位を安定させるには

 

まず股関節と体幹の中心を一致させるために、骨盤を傾斜させなければいけません。

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でも、骨盤を傾斜させると下肢は内転してしまいますね。

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そのため、今度は下肢を外転させなければいけません。

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ですが、股関節はこのような↓円錐を描くような動きしかできません。

単純な外転という動きは股関節の形状上、ありえない運動です。

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そのあたり詳しくはこちらで解説しています。

 

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となると、骨盤の傾斜により内転位となってしまった立脚を外転位に戻すためには

外転+伸展または、外転+屈曲 という斜め方向の動きを使うことになります。

 

ここまでの動きのまとめ動画

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股関節の斜め方向の運動を使って骨盤の傾斜による下肢の内転を修正するためには体幹の関節を使った調整が必要になってきます。

 

長くなりましたので体幹を使った調整方法については今後に譲りますが、一見単純な片足立位の姿勢がとても複雑な動作だというイメージはつきましたでしょうか?

 

 歩行と体幹の関係についての記事はこちら。

sinka-body.hatenablog.com

 

 

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