進化から理学療法を考える 姿勢発達研究会のブログ

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ストレッチvsカウンターストレイン どちらが正しい? 筋緊張の落とし方の基本

過緊張の筋を正常にする方法は、おおまかに2つに分類できます。

1 起始と停止を遠ざける(伸張) いわゆるストレッチ

2 起始と停止を近づける(短縮) カウンターストレインなど

ストレッチvsカウンターストレイン 効果をめぐる戦い

両者は一見、真逆のように見えますが実は同じことをしています。

曲げるのも伸ばすのも同じというと変に聞こえますが、筋緊張を落とす手技の基本は

筋の自然な動きを再現すること

だと考えるとすっきりします。筋は収縮したり元に戻ったりするのだから、ストレッチかカウンターストレッチかはどちらの動きを強調するかにすぎません。ただし、筋は「収縮」「収縮後もとに戻る」はありますが「伸張」はしません。そのため単純なストレッチ=引き伸ばすというのは筋生理上ありえない動きのため怪我をします。安易なストレッチはおすすめできません。

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また、単純な屈伸ではなくて筋の起始停止を踏まえ3次元的に動かす必要があります。

 

正しいストレッチandカウンターストレイン

空き缶つぶしの原理

さてここで、毎度おなじみ空き缶つぶしの原理です。

まっすぐな空き缶は潰れない。でも少し曲げた空き缶は簡単に潰れる。

これは少し曲げることによってタテの力がヨコに作用するようになるためです。

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とうことは、ストレッチでも逆ストレッチでも、むやみに曲げ伸ばしするのではなく、方向性を決める初動作、つまり、空き缶をほんの少し潰す動きをしっかりと出してから筋のストレッチやカウンターストレインを行う必要があります。

そして 初動作=回旋運動 です。(なぜ回旋なのかは今後理由を書いていきます)

 

空き缶つぶしの法則を踏まえて、もう一度筋の運動原理を見てみましょう。

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筋の生理的な運動である、「短縮」と「ゆるむ=短縮した筋がもとに戻る」はつまり、すでに空き缶を潰す初動作を行った後の動きになります。

ありえない動きである、「伸張」は、空き缶を潰したのにも関わらず逆方向に潰れているという物理を無視したアクロバティックな動きです。

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さて、これを踏まえると、筋緊張を正常化する手技とは

「運動方向を決定付ける初動作=回旋」を行ってから動かすこと

と定義づけられます。目的の動作の前にしっかりと回旋を行うことで無理な力を入れなくても自然に筋緊張が落ち可動域が広くなります。

ちょうつがいのような一方向の動きではなく、ネジのような螺旋の動きです。

 

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全ての運動は、単純な屈伸ではなく 回旋→屈曲or伸展 という順番で起こります。

これは、空き缶つぶしの原理、つまり、はじめの運動方向を決定付ける初動作=回旋を行ってから屈曲or伸展を行うためです。

 

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そう考えると、肘や膝などの『蝶番』関節も実は単純な屈伸ではなくすべり転がりを行う『らせん』関節だという理由もわかると思います。

上の動画もつまり、肘や膝の すべりころがり=らせん運動 の説明です。

 

まとめ

ストレッチやカウンターストレッチを行うときは引っ張るのではなくてまず回旋。

力任せに引っ張ったり曲げたりしてはいけません。

具体的にどの方向に回旋させるのかはおいおい記事にしていきたいと思いますが、とりあえずは左右にねじってから伸ばす方法を試してみてください。単純に伸張させるよりずっと早く安全に伸展できます。

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ストレッチ=回旋させずに単純に伸ばす

カウンターストレイン=回旋させて(ゆるみの肢位)曲げる

と考えると、単純なストレッチよりカウンターストレインのほうがやや正しいということになるでしょうか。でも、ストレッチも伸張前に回旋を入れれば正しく行えます。

 

また、カウンターストレインの「ゆるみの肢位」は「より楽な姿勢」とされていますが、筋の運動方向を考えるとより正確に効果的に行うことができます。これも習熟するとかなり早く効果が出るようになるので、筋の運動方向についても今後書いていきます。

 

2月の体幹の講習会ではこれらを踏まえ、具体的にどこをどのようにねじれば姿勢が修正できるか、また、姿勢の修正が上下肢の可動域制限にどれほど重大な影響を与えるかについてやっていく予定です。

 

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体幹と重力の関係から円背の治し方を考える

側湾や円背、姿勢の崩れ、座位バランスの不安定、などの体幹の崩れは無理に徒手矯正しても効果はありません。それだけでなく、体幹のバランスが悪い方は廃用や骨粗鬆症などの可能性が高く、無理な他動運動によって骨折や痛みなどのリスクが伴います。

 

ですので、体幹の調整の時には姿勢の崩れの根本の原因を考える必要があります。

体幹を調整する手技は主に中枢系疾患向けとして様々な理論がありますが今回は重力とベクトルという古典物理に基づいた一番基本の考え方を紹介します。

 

空き缶のつぶし方

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売っているときのようなきれいにまっすぐな空き缶を潰すのには力が要りますが、少し曲げてから潰すと簡単に潰れます。これは軸がずれることにより回転モーメントが生じるからです。

体幹のつぶれ方

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同様に、人間の体もまっすぐであれば姿勢を維持できますが、少しだけ曲がっているとさらに曲がる方向に動いてしまいます。つまり、はじめの時点でどちらに傾いていたかによって、同じ力が加わっているのに全く逆の方向に動くことになります。これが姿勢が崩れる基本の考え方です。

はじめはほんの数ミリの屈曲が時間が経つにつれどんどんと増して行き自分では修正できなくなると円背や座位バランスの低下が起こります。

なぜ姿勢は屈曲方向に崩れるのか?

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姿勢が崩れるというとき、ほぼ全員が左図のように円背になります。ごく一部の例外を除いて、左のようにそっくり返ることはまずありません。

空き缶つぶしの法則のように、はじめに少し曲がった方向にさらに曲がるのであれば、偶然伸展位になったときに重力がかかれば左図のようにそっくり返る人がいてもいいはずなのに、なぜでしょう。

 

大事なのは小さな単関節筋

では、本来まっすぐだった脊柱をほんの少し屈曲させる筋肉は何でしょう。

筋肉というと大殿筋や僧坊筋などの大きな多関節筋がメジャーですが、これら目立つ筋肉ははじめの方向性を強化する役割です。

一番初めのほんの少しの屈伸を方向付けるのは深部にある小さくて目立たない筋肉です。これら目立たない筋肉は運動の補助としか考えられないことが多いですが実は全ての方向性を決定付ける重要な作用を担っています。

 

上肢、下肢などの部位別や作用別に筋を覚えることはあっても、単関節筋・多関節筋という分け方を意識した方は少ないのではないでしょうか。

実はこれらの深部単関節筋はかなり特徴的な配置をされていて、ほとんどの筋に拮抗筋が存在しません。つまり、脊損時の肘のような、曲がったら曲がりっぱなしで伸展しないという全く実用性のなさそうな作用をしています。

単関節筋の作用

いきなり全ての単関節筋の作用を考えるのは大変なので、まずは脊柱に付着する3つの筋だけ考えてみます。

脊柱と脊柱を結ぶ起立筋を除けば、脊柱に付着する深部筋は、後頭下筋、斜角筋、後鋸筋、腰方形筋の4つだけになります。

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これらが収縮すると、胸椎が屈曲したいわゆる円背姿勢になります。

 

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まとめ

姿勢の崩れのほぼ100%が屈曲位になる理由は、脊柱と頭蓋や肋骨を結ぶ深部筋が屈曲位になるよう配置されているから、という答えになります。

 

つまり、姿勢を矯正しようと思ったら大きな筋だけ修正しても根本の「はじめの少しの歪み」が治っていないので効果がありません。この3つの筋に対してアプローチして「はじめの少しの歪み」を修正しないと、一瞬まっすぐになっても翌日には元通りということになってしまいます。

 

では、深部筋はどのように修正していけばいいのでしょうか。

深部筋は体の深部にあるのでIDストレッチは効きません。非常に動きが少ない部分のため、通常のストレッチでは代償動作が入ってしまい、動かせません。体の奥過ぎるので、徒手で持続的伸張を行うのにも限界があります。ハリ治療すらも深部筋には届かないという話も聞きます。

つまり、他動や徒手でどうにかなる相手ではなく、しかも目立たない筋のため見落とされがちということになります。

拘束性肺疾患や胸郭出口症候群など、斜角筋の過緊張に四苦八苦したことはないでしょうか。ためしに手ごろな相手の斜角筋を触って緩めてみてください。かなり苦労するはずです。

次回はそんな深部筋をどのように正常に近づけるかを、脊柱の進化から書いていきたいと思います。

 

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肩関節の可動域訓練法として、肩甲骨を内転させるのは逆効果

一般的には未だに、いわゆる「胸をはるよい姿勢」の動き、肩甲骨の内転運動だけを行うことが肩関節の可動性を上げると思われていますが、これは大きな誤解です。

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肩甲骨を内転してはいけない理由

肩甲骨と鎖骨の基本

 

肩関節は鎖骨と肩甲骨で成り立っています。

鎖骨と肩甲骨の角度は約55度で固定されています。ここは肩鎖関節と呼ばれていはいますが回旋運動以外はほとんど可動せず癒着しています。

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つまり、肩甲骨+鎖骨というユニットは「く」の字形をしています。

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さて、このような「く」の字形の肩甲骨+鎖骨ユニットは、肩甲骨内転によってとんでもないことになってしまいます。

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肋骨に鎖骨がめり込んでしまいます。もし本当にこうなったら大事故ですね。

みているだけで痛そうです。

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正常な肩甲骨の位置は、『ねこぜ』の姿勢

肩甲骨は 外転+前方突出 が正常です。

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いわゆる「胸を張った正しいよい姿勢」は凍結肩などの痛みや可動域制限を起こし野球肩などの怪我の原因になるだけでなく、呼吸パフォーマンスまで悪化する、完全に間違った姿勢です。

一見円背などを引き起こす悪い姿勢に見える肢位のほうが正しい、というのは戸惑うかもしれませんが、その理由は肩周辺の筋の付着を考えると分かってきますので今後解説していきたいと思います。特に小胸筋と前鋸筋がポイントです。

 

 

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 鎖骨の可動域を考える大切さについて

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 肩関上腕関節は自由度が低いということに関して

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S字?反り腰?いやいや、平背がいい??進化から考える脊柱のS字カーブの『正解』

正しい立位を理解することはリハビリの基本といえます。姿勢矯正だけでなく呼吸理学療法や歩行にも大きく関係する部分です。

 

↓どの姿勢が『正しい立位』でしょう?

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おそらく、体に関する知識が豊富なはずの理学療法士でも、上記三つのうちのどの姿勢が正しいのか明確に根拠を持って答えることができないのには理由があります。

 

もくじ

 

「クッション性」は間違い!脊柱のS字カーブが必要な本当の理由

 

ヒトの脊柱のS字カーブの理由としてよく挙げられるのが、脊柱にかかる衝撃を分散させるクッションの役目、というものです。ですが私の知る限り、具体的にどの程度の湾曲がどのような衝撃をどれくらい分散させているかの計算をした研究はみあたりません。(そのような研究をご存知の方がいらっしゃったら教えてください)

私も計算してみたことがあるのですが、どのような計算をしてもS字カーブは必要なくむしろS字にすることで弱い構造になっているという結果になってしまいました。(予断ですが、静的なS字カーブは弱い構造ですが、S字カーブをとることができる可動性があることは衝撃に強い構造です。「S字カーブは衝撃に強い」というのはおそらく可動性と静的な姿勢を混同した発言であると考えられます。)

脊柱的には『平背』が有利

 

重力に攻するのであれば↓このような単純にまっすぐな構造のほうが有利です。曲がっているものに力を加えると、さらに曲がる方向に力がかかってしまうからです。

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ですので脊柱だけ考えた場合、直立不動の姿勢をとる場合はできるだけS字カーブを無くしたいわゆる『平背』の姿勢が有利になります。

 

本題:なぜS字カーブが存在するのか

 

やっと本題です。

抗重力という視点から考えた場合は単純にまっすぐな脊柱のほうが有利ですが、平背には二つの欠点があります。

欠点1:立位は呼吸に不利な姿勢

食物という形のしっかりしたものが詰まっている胃や腸に比べ、肺には空気という形の無いものが入るので、重みに弱い構造です。重力がかかると簡単に潰れてしまい呼吸ができなくなります。そのため肋骨で形をしっかり固定する構造になっています。

ですが、四足動物の時代には重力と肋骨の方向が一致していたのに対し、ヒトの場合は重力と肋骨が垂直に交差してしまい、重力の影響を強く受ける構造です。

 

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ヒトの肺は重力に負けてつぶされてしまい簡単に呼吸困難になってしまいます。

常に上から押さえつけられている肋骨を持ち上げやすくするめには、肋骨の根元である胸椎から動かす必要があります。*1

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そして、胸椎を伸展させることにより移動した重心を戻すために骨盤と首が屈曲します。これがS字カーブの理由です。

正しいS字カーブとは

このことにより、

  • 基本的には脊柱はまっすぐ(平背)
  • かつ、胸椎が軽度伸展

という立位における『正しい』S字が導き出されます。

冒頭の図↓では、真ん中の姿勢が正しい姿勢です

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胸椎を伸展させるということだけを考えると図の左端の脊柱が過剰に伸展している姿勢も一見正しそうに見えますが、平背の二つ目の欠点である消化器と重力の関係について考えた場合、真ん中の姿勢が正しいという結論になりますが、長くなりましたのでそのあたりはまた書いていきたいと思います。

 

 

 

次回の講習会は11月と12月、テーマは歩行です。

申し込みは講習会のお知らせからどうぞ。

臨床ですぐ使えるテクニックを中心に講習会を開催してきましたが、今後はs字カーブや進化など、手技をより効果的に行うための応用的な講習会も開催していきたいと考えています。また、基本の触診を納得いくまで繰り返せる形式の講座も開催したいです。

ブログのほうもより具体的な手技や今回のような進化の話など、様々な方面で現役PTさんにとって使える記事を増やしたいと考えています

 

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*1:より中枢から動かすほうが能率がよい、という運動学の基礎法則についてはこちらの記事を参考にしてください。 

sinka-body.hatenablog.com

 

むやみに関節の自由度を上げる関節モビライゼーションの危険性

リハビリでは可動域の改善を目的として、モビライゼーション(モビリゼーション)やマニュピレーションといった手技を行う場合も多いと思います。

 

関節モビライゼーションや関節マニュピレーションなどを学ぶとき、正確な触診や関節内運動の理解、関節の状態の評価、必要な振幅などの「どうやって触るか」に注目することが多いですが、「なぜ触るか」「そもそもどういう動きが正しいか」を考えずにむやみに可動の増大を行うと関節の破壊につながりますので注意が必要です。

実際、長くリハビリに通っている患者さんの関節が過剰にゆるくなり姿勢維持に多大な筋力が必要になってしまっているケースがときどき見られます。

関節の「遊び」と「可動域」の違い

 

関節は基本的には、レールの上を走る電車のように一種類の動きしかしません。これが関節の「可動域」です。

 参考過去記事

sinka-body.hatenablog.com

 

ですが完全にレールの上しか動かせないのであればほんの少しの外力が加わるだけで脱臼や骨折をしてしまいます。そもため、ある程度はレールを外れても問題ないような構造になっています。

ですので、関節の遊びの部分というのは「これ以上レールを外れると怪我をする」という黄色信号です。遊びの部分があるからレールを外れて異常な動きをしても大丈夫、ではなくて、レールを外れると大怪我するから遊びの部分がある、つまり、できればレールを1mmも外れてほしくないというのが骨格の本音です。

この「可動域」と「遊び」の部分を混同してしまい、可動域を改善するつもりで異常な遊びを引き出してしまうとおおきな怪我に繋がります。

 

関節モビライゼーションのやりすぎに注意

 

関節モビライゼーションは、怖いくらい効果の高い手技です。

どんなに拘縮があっても廃用があっても、上手な人が時間をかけてモビライゼーションを行えば関節はある程度動くようになり一見「治った」ように見えてしまいます。

 

ですが、むやみに靭帯や関節包などの組織をひきのばしてしまうことで関節がゆるくなると骨支持力が低下し姿勢維持に無駄な筋力が必要になります。また、自由度が高くなってしまうことで何が正しい動きか分からなくなり可動域を外れた異常な動きをしてしまい怪我につながります。体の柔らかいバレリーナほど無茶な動きをして怪我をするというのが代表的な例です。身近な例としては、足ツボをやりすぎると偏平足や外反母趾になります。

危険な例としては、肩に非常に負荷のかかる生活をしている脊髄損傷患者の肩関節をモビライゼーションしていまったことで靭帯損傷や脱臼を招くケースなどがあります。この場合は患者様の今後の人生におけるQOLの大損失に繋がってしまいます。

 

安全な関節モビライゼーションのために

遊びの部分はかなり少ないことを理解する。

他動で関節内運動を促すと、かなりの遊びの部分をつくることが可能です。ですが、正常な関節では本来、遊びの部分は大きくても数ミリ、少ないと1ミリの10分の1程度です。モビライゼーションではとにかく振幅を小さく、が鉄則です。

 

 

関節がどのように動くか、を理解する

自由度が高いと言われることのある肩関節や股関節も含め、全ての関節は基本的には自由度ゼロです。レールの上を走る電車のように、一種類の動きしかしない、という内骨格生物の基本をまず理解してください。

↓なんども登場させている動画で少々くどいですが、たとえば股関節はこのような円を書くような動きしかできません。

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自由度ではなく、可動域を変える

一つ一つの関節の特性と正常な運動方向を立体的に理解し、むやみに自由度を上げるのではなく正常な運動を促すという考え方をしてほしいと思います。

 

具体的にどうすればいいか

1 一つ一つの関節の正常な動きを理解する

 

関節の立体的な運動については、いまだに平面でしか人体を考えていない旧態依然の教科書には載っていないため戸惑うかもしれませんが、一つ一つといっても類型化すれば3種類だけなのでさほど難しくはありません。

2 正常な動きを日常の動作にどのように応用しているか?を評価できるようになる

 

これは動作分析の分野になります。

動作分析が苦手という理学療法士が多い理由の一つとして、動作分析の手法が確立されていないということがあります。いろいろな考え方がありどれが適切が分からなくなってしまうのです。ですが、正常な関節運動という観点から動作分析を行えばどのようなケースでも首尾一貫した見落としのない分析が行えますので非常にシンプルになります。たとえば、歩行であれば全部で6つのポイントを評価すればどんな方の歩行も把握できます。

3 関節に無理の無い動作を促す

ステップ1と2でしっかりした評価ができてしまえば治療は単純に「無理の無い合理的な動きを促通する」というそれだけになります。

 

まとめ

 

今回は全体的な理学療法の評価と治療の考え方という大きなテーマになってしまいました。この記事だけでは抽象的すぎて分かりにくいかもしれませんが、講習会では具体的な評価方法と治療について行っていますので分かりやすいと思います。

ブログのほうでも今後より臨床で遣いやすい具体的な手技を書いていきたいと思います。

 

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体幹の運動の重要性とKT(Kinetic─Chain)の考え方

運動連鎖、キネティックチェーン(KT)を意識した理学療法、などというとなにやらハードルが高そうですが、基本の考え方はとてもシンプルです。

キネティックチェーンの基本

 

キネティックチェーン(KT)とは、ある部分の動きがほかの部分にも影響する、というそれだけのことです。体はつながっているのだからあたりまえといえばあたりまえですね。

キネティックチェーンの実際

それでは、一部分の運動が全身にどれくらい影響を与えているかを考えます。

まず、骨盤の傾斜の動きを考えます。以下の動きを実際にやってみてください。

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立位で腰を左右に傾斜させるだけの非常に地味な動きです。普通の人ならば何の苦労も無く出来てしまうと思います。

では、この動き、股関節はどう動いているでしょう?

 

屈曲?伸展?外転??

おそらく、ほとんどの理学療法士さんは「股関節は動いていない」と答えるのではないでしょうか?詳細に考えても、せいぜい軽度屈曲程度に感じられます。

 

でも、よーく考えてみると、骨盤が動いているのに股関節が動かないと、こんな動きになってしまいます。

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空中浮揚しています。ありえないですね。

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これができたら逆にすごいです。

 

 

つまり、骨盤だけが動いているように見える運動というのは実際は股関節が動かないと成立しません。

骨盤だけが動いているように見える=股関節がものすごく動いている

 ということになります。

骨盤の傾斜は 何気ない動きに見えますが、実際は全身の可動域があってこそ可能な動きです。

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そしてこのブログでも何度も書いていますが、骨盤が動かないと歩行はできません。

  

 

sinka-body.hatenablog.com

 

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歩行評価で考えるべきたった一つのこと

歩行は骨盤と股関節と体幹全体全てを考えなくてはいけない、と思うと非常に複雑になってしまいますが、これは逆に考えると

骨盤さえ動いていれば、他は勝手にいい具合になる

 

ということになります。

つまり、ごく単純にまとめてしまえば、骨盤の動きを促通さえすれば股関節も膝も足も考えなくても自動的に調整されてしまいます。

また、一見複雑な歩行分析と治療ですが、「骨盤がどう動いているか?」という観点から評価すれば前後左右の合計4つのパターンに分類することができ非常にコンパクトにまとまります。

 

 

今後は、気軽に参加できるナイトセミナーや意見交換&復習ができる症例検討会などのアフターフォローにも力を入れていきたいと考えています。

また、遠方からお申し込みの方も増えてきたので、今度はアクセスのいい東京都内で開催を検討中です。

 

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歩行分析における、体幹・脊柱の考え方 関節学編

 今回は長くなったので目次をつくってみました。

「おさらい」部分を知っている人は「本題 平面関節の特性について」から読んでください。

 

おさらい 球・臼関節の特性について

 

股関節は臼関節ですので以下のような動きをします。

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これは、可動域は広いが自由度が低く、脱臼やインピジメントが起こりやすいという欠点のある形状です。また、動かすときに大きな筋力が必要です。

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参考過去記事

 

sinka-body.hatenablog.com

 

本題 平面関節の特性について

ご存知、脊柱を構成する平面関節は軸にそってくるくると回旋します。

教科書的には、体幹は屈伸や側屈すると書かれていますがもし本当に脊椎がこんな↓動きをしたら脊髄損傷になります。

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脊椎は回旋しかしません。

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でも体幹は屈伸や側屈しますよね。その理由を解説します。

脊柱の屈伸や側屈の特性

脊柱の屈伸や側屈は、股関節や肩関節などの屈伸や内外転とは全く違う理屈で起こります。

 

 

 ↓脊柱は関節面が図のように斜めになっています。

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この形状で単純な軸回旋をすると関節面が歪んでしまうので、斜め方向に軸がずれながらの回旋をするようになります。↓

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 この『軸がずれながらの回旋』も、↑上図のように脊柱一つ一つの関係を拡大してみると、普通の回旋とさほど変わらない地味な動きに見えますが…

 

脊柱は小さい骨の集まりですので、全体図を模式化すると下のようになります。

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この状態で『軸がずれながらの回旋』をしてみると…

 

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脊柱の回旋という地味な動きをしているだけなのに、体幹全体をみると外転や屈曲という派手な動きをしているように見えます。

 関節面が水平なフラットな平面関節だと、回旋してもただくるくると回るだけになります。

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脊椎が回旋で屈伸や側屈を行うメリット

回旋は関節面のずれがすくなく関節に負担がかからない

 →損傷のリスクが少ない

回旋はてこの柄が短い

 →少ない筋力で大きな出力が可能。

 

さらに、 以下の記事で解説したようにできるだけ遠位の関節を動かしたほうが運動に有利になります。

nka-body.hatenablog.com

 歩行をするなら股関節で屈曲伸展を行うより頚椎や胸椎で屈曲伸展させたほうが約2倍も能率的です。

 また、そもそも自由度の低い股関節のみで歩行を行おうとするとこんな↓意味不明の歩行になってしまいます。

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 なぜ体幹を動かさずに股関節膝関節のみで歩行しようとすると↑のような歩容になってしまうかの記事はこちら↓

sinka-body.hatenablog.com

 

終わりに

 

今回は、理学療法のメインとなる歩行の評価治療において体幹と脊柱の動作を評価することがいかに大切かを主に関節運動学の視点から解説しました。

リハビリにおいて体幹と脊柱の運動がどれだけ重要か、はいくら解説してもしきれないくらい深い部分なのでまた視点を変えた解説もしていきたいと思います。

 

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歩行に関する過去記事

 

sinka-body.hatenablog.com

 

 

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